J (1.新入社員)
4. 花火の夜 (11)
そして今。
夏季練成の花火の夜、
友美さんと肩を並べて見ている、この花火、なのでした。
「純一さん、去年の隅田川の花火、覚えている?、」
「覚えているよ、もちろん、」
「そう、よかった♪、」
友美さんは嬉しそうに言いました。
私は暫くの間、去年の花火の夜のことを思い出していました。
その時からの一年を振り返えっていたのです。
「一年って早いね、トモミさん、」
「うん、こんなに、」
友美さんは私の顔を確かめるように見てから、
小さな声で、(こんなに、幸せ、)と言いました。
この一年で私と友美さんは結婚が許され、 この一年で私と友美さんは、誰にも祝福される間柄になっていたのです。
私は、(これで、これでいいんだ、)と自分に言い聞かせ、 先程、レイと目があって、少しでも揺れた私の心を戒めました。
そして、、、私は、友美さんの肩を抱きました。
しばらくそのまま花火を見ていました、
が、そのうち、皆の手前、私的な行動は慎むべきだと考え、
「あとでね、みんなに悪いから、」
私は友美さんにそう言って、自分のもといたテーブルに戻りました。
友美さんは落ち着いた素振りで、 しかし未練めいた眼差しで、「うん、」と言いました。
席に戻ると、A部長もB課長もかなり酔っ払っていました。 (これは勘弁、)と思い、私は新入社員のテーブルに移動しました。
新入社員たちは皆で一気飲みをしたようで、大層酔っていました。
私はレイを見かけ、 「おい、レイちゃん、駄目じゃないか、そんなに飲んで、」 と声を掛けました。
レイは酔っぱらった様子で、 「キャハハ、だってェ、一気飲みなんてはじめてなんだもん、」 と答えました。
(あれれ、これはいったい、レイはどの位飲んだのだろう、)
私は目の前にいた安田に、 「、、、ったくう、おい、安田、ちょっとは気を使え、未成年なんだぞ、この子は、」 と言いましたが、安田は、 「工藤さん、違うんす、っつか、レイちゃん、自分で飲んだんすよ、」 などと言うのでした。
ち、しようがない奴だ、と私は思いましたが、 それ以上言っても仕方がないので、それで仕舞いにしました。 そして、恥かしながら、私も私で軽い奴でして、 「工藤さん、イッキ、イッキ、」との大合唱がおきると、 つい一緒になって飲んでしまったのです。
花火が終わる頃には、私もぐてんぐてんになってしまいました。
気がつくと、何故だか私の隣には、レイ、がいました。
(4.花火の夜、の項 終わり)
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