J (1.新入社員)
4. 花火の夜 (10)
その夜、私たちは初めて結ばれました。
私の強い意思を感じ取った友美さんは、 私の申し出にただこくんと頷くよりなかった、、、
花火はまだ続いておりました。
夜空には一面に、どん、と鳴るごとに、 花火が華やかな光を散りばめられては消えていきました。
私たちはこの刹那のようでした。
ふたりは放たれた火の粉のように、 川沿いのネオンが艶やかなホテルへと消えていきました。
ベッドでの友美さんは無言でした。
固く目を瞑り祈るようでもありました。
しかし彼女自身は、しっとりとしていました。
潤んだ瞳のようでした。
私は優しく彼女を抱きました。
しかしその瞬間は野獣のようでもありました。
ことが終わり、落ち着きを取り戻した時、友美さんは口を開きました。
「ありがとう、、、」
友美さんはそう言いました。
私も、「ありがとう、」と、 自然に口から感謝の言葉が出ました。
(友美さん、君のことはずっと大切にする、)
私は心の中でそう約束しました。
その夜から私は友美さんに対して、 愛しく思うことに加え、さらに、 彼女を大切に、守っていく義務のような感情、が芽生えました。
これは、親が子を思うような感情に近いものです。
結婚にあたっての私の決意はこうして固いものになった、
今にして思えばそのように思えるのです。
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