J (1.新入社員)
4. 花火の夜 (9)
その友美さんが結婚前に私に身体を許したのは、 夏季研修の前の年の花火の夜でした。
その日私たちは友美さんの実家へ行き、 何度目かの冷たい仕打ちに合って、辛い気持ちに包まれていました。
「まぁ、なんとかなるよ、そのうちに、、、」
と、私は友美さんを励ましましたが、
私とても八方塞りで前が見えなかった、、、
(これが仕事だったら、もっとうまくできるのに、、、)
私は友美さんのご両親に信頼を得ることができず、 自分という存在に自信がなくなりそうになっていました。
その日は下町の川で大きな花火大会がありました。
私たちはあてもなく花火を見に行くことにしました。
何でもいい、華やかな気分になりたかったからです。
しかし花火を見ながら私はその美しさよりも、 その華やかさの短命さ、そのはかなさばかりを感じました。
どん、となって、夜空を一面に輝かせる美しい火の演舞、 けれど、それは一瞬にして燃え尽きてしまう、、、
私はとてもとても切なくなり、友美さんの肩を強く抱きました。
友美さんは私がじっと黙っていることが不安だったのでしょう、 私の腕の中に顔を埋め、 そっと、「好き、って言って、」と言いました。
私は、、、答えませんでした。
その代りにクチヅケをしました。
そして、私は、、、
「君を今夜、、抱きたい、」、と耳元で囁きました。
私は私に力が欲しかった。
そのためには彼女を抱くよりない、そう思ったのです。
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