J (ジェイ)  (恋愛物語)

     Jean-Jacques Azur   
   2002年11月16日(土)    ミスマッチにならないうちに

J (1.新入社員)

1.面接 (6)


自席に戻ると私は部長に声をかけられました。

「工藤君、どうだね、彼女の印象は?、」
「ええ、少しばかりおとなしい感じもしますが、
 入社して鍛えればなんとかものになるようにも思いました。」
「う〜む、そうか、、、」

部長は腕組みをしてタバコをくわえました。
少し考え込むようなそぶりにみえました。

「どうしたんですか?、部長?、」
「、、、実はな、工藤君、あのあと人事課長とも話したんだが、
 彼女を面接をしてみて、やはり営業部には無理があるんじゃないかと、
 私も人事課長もそう判断したんだ。」
「どうしてですか?、何が理由なのですか?、」
「人の話をよく聞くし、返事もいい、学校の成績も問題ない、
 だが、いかんせん、君の言う通り、おとなしい。」

私は黙って次の言葉を待ちました。
部長はタバコを一息吸ってから続けました。

「ま、それだけならいいのだが、彼女は一切質問をしなかったのだよ。
 ただ、はい、はい、と返事をするだけでな。
 やはり営業部にあっては、もう少し積極的な性格であって欲しいし、
 またそうでないと勤まらない、と思うのでな。」

「でもそれは、緊張していたからじゃないんでしょうか?、」
「確かに。ただ彼女はもともと希望が経理部でもあったことだし、
 この際、希望とかけ離れている営業部よりも、
 君のフィアンセの入れ代りで総務部に配属させるほうのが、
 より適材適所であろうとの判断なんだ。」

「、、、そうですか。」

私は釈然としないものを感じましたが、
上での決定事項にあえて反駁するほどでもないととも考えました。

「まぁ、工藤君よ、君のスタッフについては、改めて募集する。
 今回の彼女については、お互いがミスマッチにならないうちに、
 営業部としてはパス、ということにする。
 そういう心積もりでいてくれたまえ。」

「、、、そうですか。分りました。」



私は先ほどまで熱心に仕事の内容について話しを聞いていた
レイの表情を思い浮かべました。

私は何故か落胆している自分に気づきました。

その時既に、知らず内に、
私は彼女を好いていたのかもしれません。



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