J (1.新入社員)
1.面接 (6)
自席に戻ると私は部長に声をかけられました。
「工藤君、どうだね、彼女の印象は?、」 「ええ、少しばかりおとなしい感じもしますが、 入社して鍛えればなんとかものになるようにも思いました。」 「う〜む、そうか、、、」
部長は腕組みをしてタバコをくわえました。 少し考え込むようなそぶりにみえました。
「どうしたんですか?、部長?、」 「、、、実はな、工藤君、あのあと人事課長とも話したんだが、 彼女を面接をしてみて、やはり営業部には無理があるんじゃないかと、 私も人事課長もそう判断したんだ。」 「どうしてですか?、何が理由なのですか?、」 「人の話をよく聞くし、返事もいい、学校の成績も問題ない、 だが、いかんせん、君の言う通り、おとなしい。」
私は黙って次の言葉を待ちました。 部長はタバコを一息吸ってから続けました。
「ま、それだけならいいのだが、彼女は一切質問をしなかったのだよ。 ただ、はい、はい、と返事をするだけでな。 やはり営業部にあっては、もう少し積極的な性格であって欲しいし、 またそうでないと勤まらない、と思うのでな。」
「でもそれは、緊張していたからじゃないんでしょうか?、」 「確かに。ただ彼女はもともと希望が経理部でもあったことだし、 この際、希望とかけ離れている営業部よりも、 君のフィアンセの入れ代りで総務部に配属させるほうのが、 より適材適所であろうとの判断なんだ。」
「、、、そうですか。」
私は釈然としないものを感じましたが、 上での決定事項にあえて反駁するほどでもないととも考えました。
「まぁ、工藤君よ、君のスタッフについては、改めて募集する。 今回の彼女については、お互いがミスマッチにならないうちに、 営業部としてはパス、ということにする。 そういう心積もりでいてくれたまえ。」
「、、、そうですか。分りました。」
私は先ほどまで熱心に仕事の内容について話しを聞いていた レイの表情を思い浮かべました。
私は何故か落胆している自分に気づきました。
その時既に、知らず内に、 私は彼女を好いていたのかもしれません。
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