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2007年02月25日(日) 山田詠美『無銭優雅』

おなかがいっぱいになるまで生きることを堪能してみたい。いつか死ぬのは知っていた。けれど、死ぬまでは生きているのだ、という当たり前のことを意識したことがなかった。光り輝く生の実感なんて、波乱万丈のドラマの中にしかないと思っていた。でも、本当は、ささやかな日々の積み重ねが、こすり合わされて灯をともし、その人の生涯を照らすものではないのか。そして、照り返しで死を確認した時、満ち足りた気持で、生に飽きることが出来る。(128ページより)



山田詠美を初めて読む。中央線の話だというので。

『FRaU』や『Grazia』に取り上げられる作家のイメージが先行して、江國香織(私はあんまり好きじゃない)のようなオンナオンナした恋愛を書く人だと思っていた。間違っていました。すみません。

舞台は西荻窪から三鷹あたりまで。四十過ぎ未婚女性の、生活と恋愛(恋愛だけで成り立つ人生の時期は、とうに終わっている)。全体の雰囲気が軽妙で、明るい。オビには「心中する前の日の心持ちで、つき合って行かないか?」と抜き書きがあるが、全体はそんなじめっとした話ではない。それがすべてを救っている。死を、過去の別れを、仕事を、「四十過ぎ独身」の現実を、すべてを恋愛の、主人公の明るさが、救っている。





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