朝日新聞の文化面に、石牟礼道子の記事を見つける。『苦界浄土』第2部の『神々の村』が単行本になったことを知る。うれしい。
石牟礼道子という女性、作家、ひとについて考えるとき、私は色々なものから解き放たれた気分になる。解き放たれ、台所で今煮ている肉じゃがのゆげを、いとおしく眺める自分になれる。なぜだろう。
朝日新聞は石牟礼作品を、「近代に踏みにじられる、前近代の基層にあった残光」と書いていた。光。それは崇高で「ははあ」と頭を下げてしまう類のものではなく、手を伸ばすと温かく包まれるような、手触りのある何かだ。
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