「それでは、あなたがたの力を、試させて頂きます」
一斉に飛び来るシルフ3姉妹。 しいなとの契約のため、ロイドたちは戦闘に突入しました。 しかして、数分後。 事態はあっけなく、終わりを告げるのです。
「・・・負けた」
ロイドはがくりと、膝をつきました。 偶然にもかち合ってしまったボスなら、まだ負けも言い訳は付くでしょう。 しかし今回は、違います。こちらは準備万端・用意万全の状態での、作戦は”一気に行くぜ”。 ボス戦仕様での、満を持してのボス戦。 にも関わらず、完敗。
「まだまだのようですね」 「出直してくれば〜?」
シルフ三姉妹にケチョンケチョンに言いのされ、返す言葉も無いロイド。 一行、ソードマスター以来の敗戦という敗戦でした。
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「強いねーシルフ」
敗北したロイドたちはあっさりと見切りを付け、風の神殿(実際はパラ何とか王朝の遺跡とか言う名前なのですが、 プレイヤーの頭は覚えることができませんでした)を引き返していました。
「あれは・・・今は無理っぽいなぁ」
同じ敗北であっても、勝てそうかそうでないかの判断くらいは付くロイド(プレイヤー)です。 シルフ3姉妹は、3姉妹と名のつくだけあって、3匹で一斉にかかってきます。 誰か1匹を先に倒せば良い、という基礎戦法は既に初戦で試してしまっていました。 何であろうと、結果は、完全敗北。 つまり、何度も挑戦し直して勝てる相手では無い、と判断したのです。
「ってことは、先にイフリートだな」 「イフリート・・・って、トリエットだよね? どうやって戻るのさ」
試しにパルマコスタへ行ってみましたが、誰に聞いても、船は出してくれません。
「ルインを廻って、さらに進めば陸伝いに帰れそうだけれど・・・」 「陸伝い」
ロイド、イヤな思い出(第2回参照)が、脳裏を過ります。 しかし、今回はロングモードが使えるということを、今更に気付いて驚きます。
「で、イズールドに寄って補給、オサ山道、砂漠越え」 「長い道のりね・・」
リフィル先生は長ーい溜め息を吐きました。 第2回に比べれば、キャラクタたちのレベルも、プレイヤーのレベルも格段に上がってはいることでしょう。 しかし時間の浪費は確実です。
「でも、しいなのことを考えると取ってあげたい気もするしなー」 「ロイド、あんた・・・」
ほんのり顔を赤らめるしいなです。 が、
「だって弱いし」 「炸力符」
刹那、炸力符で吹っ飛んだロイドを無視し、一行は作戦会議を再開します。
「そもそも、しいなの契約って今やんなくても良い気がするんだよね」 「イベント的にも、時期的にも、ね」 「シルフのことなんて、この時点で誰も口にしてないもんねぇ」
光の精霊アスカの怪情報を教えてくれた、ノヴァさんの例があります。 つまり、おそらく冒険を進めていく過程で、”精霊集め”という行程がどこかに含まれているのでしょう。 (プレイヤーは、現時点でこの先のストーリー展開を知りません。)
「あれ?・・・でも、そう考えると、イフリートだって条件は同じだよね?」
コレット嬢、痛いところに気が付きました。 シルフと時を同じく、イフリートと契約しろ、なんてイベントはこの時点で起こり得るはずもありません。 何しろ、今更トリエットまで逆走する時間のロス。 現在位置的に近いシルフ(風の神殿)と違って、明らかにストーリー本筋を逸脱する行為です。 ロイドはあさっての方角を見て、ぽつりとつぶやきました。
「だってほら、シルフって・・・3匹いるじゃん」 「うん」 「イフリートなら1匹かもしれないじゃん」 「・・・ふーん」
一行(ロイド除く)は、冷めた目線を送ります。 1匹ならばタコ殴り。 アクション苦手プレイヤーによる、どちらが悪役だか分からない戦術により、かろうじて成り立つ勝利です。
「分かってくれ、みんな、しいなのためなんだ!」
こんなところで唐突に告白したところで、イフリートを取る必要は皆無です。 ロイド(プレイヤー)、どうも、しいなに甘いのです。
「よーし、みんな! トリエット目指して長旅にしゅっぱーつ!」 「おー!」
元気に拳を振り上げてくれたのは、天然コレット嬢だけでした。
後になって(というのはごく近い未来なのですが)、 ロイド一行は空を飛べる便利な乗り物をあっさりと入手し、 しかもトリエット遺跡近辺に、イベントで再びやって来ることになろうとは、この時点では露も知らず。
彼らが全行程を終えたのは実に4時間後のことでした。
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