short story


2001年02月04日(日)


14-触れた手-
はじめて触れた彼女の手は
冷たくて、細くて、柔らかかった。
僕が彼女の手に触れることは
驚くことに、それまでなかったことだった。
触れたいと思うことはあったけど
触れることはなかった。
なぜなのかと、今になって考えてみると
一番大きな理由は、触れる理由がなかっただけのことだけど
ほんとは
そう簡単には触れることができなかったんじゃないかと思う。
触れる。ということはつまり
彼女をより深く僕へと引き寄せること。
いつも、ある静かな距離を保っていた僕らには、僕にとっては
それはとても、神聖で、恐ろしいことだったんだと思う。

僕は暖めることと、彼女の手の感触を感じることと
両方に一生懸命になってしまって
知らずに無言になっていた。
「怒ってるの?」という彼女の言葉で我にかえり、
コーヒーを入れに立ち上がった。
動揺を隠すのにとても苦労した。
ずっと。もっと。触れていたかった。
そう思った。

彼女は、どう思ったんだろうか。
僕に触れられて。
僕に触れて。

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日記才人