short story


2001年02月03日(土)


13-乱暴な手-
どれくらいの間、僕の帰りを待っていたのだろうか。
彼女は「そんなに待ってないよ。」と言ったけど
体が冷え切っているのは明らかだった。
鼻と頬が少し赤らんでいたから。
僕はとにかく彼女を家に入れて、急いで暖房を入れた。
「じゃぁ私はコーヒーでも入れるね。」
コートを脱ごうとする彼女を制して
「いいから。俺がやるから。部屋が暖まるまでそこにいろ。」
とソファーに座らせた。

湯が沸くまでの時間、やはり彼女は寒そうにしていた。
ほんとに何時間、外で待っていたんだ?
彼女は手に息を吐き掛けながら笑うだけだった。
僕は彼女の横に腰掛けて
「どら。」と手を握った。
努めてぶっきらぼうに、平静を装った覚えがある。
本当は心の中では、ただ事じゃなかったんだけど
それを悟られないように、ちょっと乱暴に手に触れた。

 < past  INDEX  will >
日記才人