その夜、彼女が帰った後も いつまでも眠れなかった。 冷たかった手の感触を思い出すと なかなか眠れずにいた。 ただ、触れただけなのに。 今時、中学生でもそんなことで喜ばないな。と 自分でも可笑しかった。
しかし、そう何度も今日のようなことがあっては困ると思った。 だって風邪でもひいてしまったら大変だ。 彼女にはいつも元気でいてもらいたいし 僕の部屋を訪れることに苦労を感じてもらいたくなかったから。 なにか良い方法はないものか。 彼女を待たせずに済むような方法はないものかと思慮を巡らす。 ベッドの中で、何度も寝返りをうった。
考え疲れてウトウトしてきた頃、 突然にふと、いい考えが浮かんだ。 そうだ。合鍵だ。 合鍵があればいいじゃないか。 そうすれば彼女が寒い中、僕の帰りを待つこともないし、 休日の朝早くから起こされることもない。 どうせこの家は彼女の家みたいなものだから 合鍵を渡せば済むことだ。 どうして今まで思い付かなかったんだろう なぜこんな簡単なことに。 僕は、かなり前に予備にと合鍵を作っておいたことを思い出し、 ベッドから飛び起きた。 そして家中の引き出しを引っ掻き回して探した。 僕は探し物をするのがヘタだったから それは大変な作業だったけど、夢中になって探した。
見つけた頃はもう外は明るくなっていて、 ふと見渡すと、部屋の中は散々な有り様だった。 なにしろ部屋中の小物入れや引き出しをぶちまけたから。 足の踏み場もないほどだった。 でもそんなことはどうでもよかった。 見つけた。 これだ。 指でつまんだ一つの鍵。 これを彼女に渡そう。 いつでも好きな時に、僕の部屋に入ることができる。 彼女の鍵。 明日、彼女に渡そう。 いつでも僕の部屋においでよ。って 彼女に言おう。
僕は陽が昇りきってもまだ 眠れずにいた。
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