彼女はいつも突然やってくるので、 僕が不在の時もあった。 平日は大抵、6時頃には帰宅していたけど、 不意に飲み会や他の用事が入ったりすると かなり遅くなることもしばしばだった。
その夜、僕は少しばかり友達と食事してから家路についた。 時計は8時を回っていただろうか。 家までは駅から歩いて10分ほど。 12月の夜は身を切るように寒いが、風がないせいか穏やかな夜だった。 僕は、こういう日に歩くのは嫌いではなかったので、 咥え煙草なんかしながら、のんびりと歩いた。 確か、冬は息が白いのか煙草の煙なのか分からないなぁ。とか どうでもいいようなことを考えていたと思う。
見えてきた自分のアパートには いくつも部屋の明かりがともっていた。 飯時がちょうど終わった頃か。 普通ならば団欒の時間だ。 住人は皆、思い思いの時間を過ごしているに違いない。 もしかして明かりがついてないのは僕の部屋だけか。 なんだかちょっと寂しくなって 風呂でも入って寝るかぁ。などと思いながら アパートの階段を上る。 そこでふと人の気配を感じた。 ちょうど僕の部屋のドアあたりに誰か立っている。 だれだろう?こんな時間に・・・。
人影は、僕に向かって静かに 「おかえりなさい。」と言った。
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