short story


2001年02月02日(金)


12-僕の不在-
彼女はいつも突然やってくるので、
僕が不在の時もあった。
平日は大抵、6時頃には帰宅していたけど、
不意に飲み会や他の用事が入ったりすると
かなり遅くなることもしばしばだった。

その夜、僕は少しばかり友達と食事してから家路についた。
時計は8時を回っていただろうか。
家までは駅から歩いて10分ほど。
12月の夜は身を切るように寒いが、風がないせいか穏やかな夜だった。
僕は、こういう日に歩くのは嫌いではなかったので、
咥え煙草なんかしながら、のんびりと歩いた。
確か、冬は息が白いのか煙草の煙なのか分からないなぁ。とか
どうでもいいようなことを考えていたと思う。

見えてきた自分のアパートには
いくつも部屋の明かりがともっていた。
飯時がちょうど終わった頃か。
普通ならば団欒の時間だ。
住人は皆、思い思いの時間を過ごしているに違いない。
もしかして明かりがついてないのは僕の部屋だけか。
なんだかちょっと寂しくなって
風呂でも入って寝るかぁ。などと思いながら
アパートの階段を上る。
そこでふと人の気配を感じた。
ちょうど僕の部屋のドアあたりに誰か立っている。
だれだろう?こんな時間に・・・。

人影は、僕に向かって静かに
「おかえりなさい。」と言った。

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日記才人