彼女は献立を決める時、 僕に、なにが食べたいか?とは聞いたことがない。 聞く必要がないと思ったのか。 聞いてもロクな返事が返ってこないと思ったのか。 ともかく、僕にはそれが心地よかった。 だから僕も、あれが食べたい。とかは言ったことがない。 その代わり、出されたものは全部食べる。 彼女の料理は旨かったから、簡単なことだった。
ただ、僕の嫌いな椎茸に気付いてからは 週に1回はメニューにそれが加えられるようになった。 これには参った。 よくもまぁあんなに椎茸の調理方法を見つけてくるものだ。 僕が椎茸に気付いて、あっ、と言うような顔をすると 必ず、にやっと笑った。 母親みたいなやつだ。と思った。
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