short story


2001年01月27日(土)


06-やきもち-
本屋を出るとそのまま必ずCDショップに入る。
すぐ横にあるから自然と足が向くのだ。
彼女があの本屋にこだわるのは長椅子のせいだけではないようだった。

僕らは、本の趣味はまるっきり違っていたけれども
音楽の好みは非常に似通っていて、どちらもjazzを好んで聴いた。
僕は楽器を少しやっていて、その演奏レベルの高さとグルーヴに惚れたが
彼女は一体jazzのどこが気に入っていたのだろう?

本と違って、CDを選ぶ時は
これは雑誌で見た。とか
このミュージシャンの新譜は聴くべきだ。とか
二人で話をしながら買い物をした。
なぜかと言うと、彼女の意見を聞いて買ったCDには不思議とハズレがなかったからだ。
だから彼女の批評はいつも素直に聞くようにしていた。
でも僕は、実はそれがちょっとくやしかった。
だって、自分だって良い音楽を彼女に紹介して、
「よかった。」と言って欲しかったからだ。
今思えば、子供くさいやきもちだけど。

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日記才人