家族進化論
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2018年01月24日(水) 祈り

♪友とコーヒーと胃袋

僕にだって守るべき生活があるから
何をしてあげられるってわけじゃないけど

友よ 友よ

(大藪先生のメルマガより引用)

「諦観」という言葉があります。大修館の明鏡国語辞典によると「俗世の欲望
をむなしいものと悟り、超然とした態度をとること」「物事の本質をはっきりと
見きわめること」となっています。諦めて観るということはゆったりとした態度
で物事の本質を観ることだということです。

 僕は諦めによってずいぶん心が軽くなりました。

 良い授業をしようと思うと何をどうやれば良いのか凄く迷いませんか?一所懸
命授業準備をして授業に臨んでも思ったほどの充実感がないことがありませんか?
All Englishの授業をするけど、なんか空回りしているような... ってことあり
ませんか?

 それは色んなことを求めすぎなんです、たぶん。先週「負け授業」の話をしま
したが、求めすぎると「負け授業」になることが多いです。

 本校は週に6コマの英語の授業です。時間に直すと週に5時間。一年を40週と
して計算して年間200時間。海外に住んで1日8時間英語に触れると考えると200
時間は海外生活わずか25日分です。1ヶ月にもなりません。3年間授業を受けた
としても海外生活約2.5ヶ月分の英語量です。

 それで語彙語法、文法、表現力、発音を完璧にしてコミュ力も付けるなんて神
ですよ、そんな教員。

 だからきちんと諦めなければなりません。3年間あるいは6年間で生徒たちに
絶対教えたい事は何か、そしてそのために何を諦めるべきなのかを考えておかね
ばなりません。

 以前の僕は大学の進学実績最優先で、大学入試を解くのにあまり重要でない力
の育成にはほとんど時間を割きませんでした。コミュニケーション用のアクティ
ビティーや英語の歌や生徒たち自らが何かを英語で作り出すというものはやりま
せんでした。本当はとてもとてもやりたかったのですが、入試を最優先にしたの
で諦めました。

 今の中1では模試の成績を諦めています。高校2年生までの模試で好成績を取
るのを諦めて、生徒たちが楽しいと思う授業を心がけています。オリジナル文法
解説プリントを作らせたり、歌を歌わせたり、会話も色んなパターンで楽しんで
もらってます。来年度は班活動で動画作品を作ることを画策しています。

 予備校や塾が充実していない田舎にある本校でこういうことをやると「こんな
授業で大学受験大丈夫なのか?」と不安になって、「先生、もっと受験に関係あ
ることをしてください」という生徒が出てきます。が、そこは僕が大学受験のエ
キスパートであること(自信が無くても生徒にはそう映らないとダメなんですよ)
を示して、安心してもらおうと思っています。進学実績最優先の前回の教え方が
今の教え方の土台となっているんです。

 また、一回一回の授業でも求めすぎてはダメだと思います。

 長文読解の授業でTeacher's Manualや解説書に書いてあるようなことを詳細に
全部教えて、全部理解させようとしたりしてませんか?生徒にとっては初見の英
文である教材は読むだけでも大変なのに、文法解説もバッチリやりながらパラリ
ーをやったりしていませんか?

 妙な例えになりますが、戦場に向かう際にルーキーは色々な場面を想定して重
装備になり、ベテランはミッション達成に必要な最小限の装備しかしないそうで
す。頼りになる道具をたくさん身につけることよりも、それらを持っていくのを
諦めて、戦場で生き残るために最も大切なシャープな動きを確保するそうです。

 授業は戦場ほど緊迫したものではないと思いますが、ミッションを達成するた
めに無駄のない動きがないようにしなければならないのは同じではないでしょう
か?

 「今日は基礎力を養うため」「今回は文章を読むということを意識させるため」
「今回はアウトプットにつなげるため」などその時間の目標があるはずです。そ
の目標を達成するために諦めなければならないこともあるということです。

 僕が昨年末TK九州支部の勉強会でやらせていただいた「読めない単語を読む方
法」の後にいただいた質問の中に、文法の説明はしないのか?とありました。細
かい語彙や文法の説明をすると未知語類推のためにやっていることがぼやけてし
まうので、あえて詳細な説明はしません。もちろん読ませる教材の語彙レベルや
文法が既習であることには気を配ります。

 すべてを頑張ろうとすると力が入りすぎて疲れてしまいます。諦めることも覚
えて楽に授業をしてみてはいかがでしょう?


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