西方見聞録...マルコ

 

 

書評「路地の教室-部落差別を考える」 - 2014年04月18日(金)


路地(被差別部落を本書ではこう呼んでます)出身のルポライター(1970年代生まれだよ〜)がすごく淡々とニュートラルに語る部落差別の入門書。
自らが受けた結婚差別をものすごい冷静に客観的に語ってて、逆にすごい著者の胆力を感じました。

この問題に深くかかわってきた人には少し物足りなかったり、ちょっと一言言いたい記述もあろうかとは思いますが、著者が目指した「ニュートラルな姿勢」は彼の声をより広い範囲に届かせることを可能にしたように思います。いわば、橋のない川の対岸へ届く声を著者に与えているといったらいいのか。

特に私には差別する人間の心の動きを心の病とのアナロジーで記述した個所が、心に残りました。自らが経験した躁うつ病の時の、「あ、こんなに眠いということは、今鬱だから仕事を控えて、薬を飲もう。この金遣いは躁転したな。病院行って薬を変えてもらわなきゃ」と、コントロールして心の病気の周囲への影響を少なく抑えるように、人間というものが「差別する心」から全く自由になれなくとも、それを心の病として客観視してコントロールして周囲への影響を最小限に抑える努力が可能なのではないかというのです。

大阪の路地の子どもたちの高校進学を可能にするシステムや同和教育を壮大な社会実験として有用な知見を今後に役立たせることを提言した部分も興味深かったです。

とにかく、さらっと非常に短時間で読めちゃいますので、通勤読書にお勧めです。


路地の教室ー部落差別を考える


...



 

 

 

 

INDEX
past  will

Mail Home