西方見聞録...マルコ

 

 

おいしいコーヒーの真実 - 2008年09月05日(金)

 
 1日平日を休むことにしたので、自分にごほうびということで、朝から国際美でモディリアーニ展と塩田展(塩田展は2度目。モディリアーニはお初)をみて、東京から塩田展を見に来たぱるたさんとジュンコさんとランチをすべく、心斎橋のベトナム料理やアンゴンで、塩田展の仕掛け人のAkikoさま、ランチの女王様なみなみさん、今度一緒に信貴山行こうねのトモタローさん、それからタイに行ったきり3年戻らなかった花嫁コンバさんと集いました。
 で、午後からはおいしいコーヒーの真実と言う映画を第七藝術劇場にて観ました。

 で今回はこの映画の感想なのですが、

 ふむ。

 2時間座って消費者として映画を楽しむのが映画鑑賞だと思ってると面食らうかも。あんまりエンターテイメントしてません。データーの出し方も割りと断片的で、あとで独自にデータを検証したほうがいいところもあります。

 そういう意味で本当にスタートボタンを押すための映画で、作者もそれを狙ってるらしく「詳しくは下記のサイトをご覧下さい」って最後にテロップを出します。

 でも私にはおもしろかったし、アフリカの自助努力とそれを打ち砕くWTOルールに注目した監督の姿勢に共感します。

 話しの軸になるのはタデッセさんというエチオピアのコーヒー農家をまとめて、中間業者を省くことでコーヒー農家の利益を確保するために奮闘するおじいさん。

 そのおじいさんのこちら側にはコーヒー生産地、向こう側にはコーヒー消費地の皆様がつながってるのをさまざまな地域からのロケで見せて行きます。

 とにかく先進国のヒトがコーヒー1杯を飲んで、そのうちアフリカ農家が受け取るのは3円から9円(と映画にはありましたがパンフレットによると日本の場合は1杯400円のコーヒーを飲んだ場合、タンザニアのコーヒー農家の取り分は1.7円、21世紀初頭のコーヒー危機以降は0.4円だそうです。)と低価格。途上国では普通に働いても生活の維持が難しい状況が示されます。

 あと映画では、21世紀はじめのコーヒー危機以降のコーヒー価格の低落から話が始まっていますが、それ以前、途上国の独立と同時に石油につぐ世界第二位の国際取引がされているこのコーヒーは投機的な投資の対象となって、価格が乱高下し、コーヒー農家はその乱高下する価格にずっと振り回され続けていました。(もちろん価格が高くなったときは商社は買い控えて近代的な倉庫に貯蓄されたコーヒー豆を使うので農家は取引の機会自体を失い、徹底的に買い叩かれるのだという話も聞きます)そういう部分も補足的に知っておくと、21世紀初頭のコーヒー危機の意味も違って感じられるかもしれません。

 わたしが興味深かったのはWTOのメキシコ・カンクン会議でいかに貿易ルールにおける途上国の不利が形成されるか迫ったところ。密室個別会談を開放してどの国の代表が何を言ったか、情報公開するのがまず第一歩、と感じました。

 またエチオピアの生産者と輸出業者が左右にすわってコーヒーの買い付けをする場面があるんですが生産者の身なりと輸出業者の身なりの違いに同じ国にいながら消費者に近い側と生産者との間で生じてしまう断絶におなかがぎゅっとしました。


 で、この映画のメッセージの核は以下の3つの場面のように思いました。「支援は要らない、公正な貿易のルールがあれば自立できる」とWTOで語るアフリカ、マラウィの通商代表。援助物資を受け取った、帰り道に「こんなに一生懸命働いても物乞いをしなけりゃ生きられない、こんな世の中の不条理を子供に見せなくてはならないのがつらい」と語るエチオピアの農民。そして最後にアメリカから送られる食糧支援の小麦粉の映像をバックに語られる「アフリカの国際貿易におけるシェアが1%増加するだけで、現在アフリカ向けに行われている国際支援の総額を上回る富がアフリカに回る。そして現在のアフリカの国際貿易へのシェアの低さは1次産品の価格抑制が原因」と語る場面。

 先進国に求められているのは支援という免罪符を買うことではなくて、国際貿易ルールを公正にして今ある搾取を辞めることなのだろうと思います。
 
 しかし、1次産品の価格抑制の原因として先進国の農業補助金の存在が指摘される場面もあり、「搾取をやめる。」という根本的な問題解決の複雑さも感じました。
 
 対処療法としてはフェアトレードへアクセスが手っ取り早いですが、WTOのあり方、それに代わる枠組みとしてのFTA・EPA体制のあり方についても注目が必要かな、と思いました。

 またスタバがフェアトレードコーヒーを発売始めるなど、企業はこうしたイメージに敏感なので、そういう企業努力をちゃんと注目して評価すべきは評価すべきなのでしょうね。


 コーヒー問題についてのお勧め教材はユニセフが開発して日本ユニセフ協会が日本向けに訳出したものをさらに現場の学校の先生用に使いやすく改訂したこちら→http://www.dear.or.jp/book%20coffee%20new.html
の教材がお勧めです。


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