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■ ティルナノグ
「キング・アーサー」をビデオで観た。 予告編CMでけっこう期待していたのだけれども、あまりケルト神話の匂いはせず、その代わり“強いもの大好き”のブラッカイマーのイデオロギー的匂いが強いなあ、という印象が残った。 ところどころぐっとくる台詞もあったのだけれども、アーサー王にいまいち華がないだけでなく、ランスロットやトリスタンの影が薄いのも気になったところ。 アーサー王と円卓の騎士といえば、やっぱり忠誠心と友情だと思うから、もっと精神的な絆を強く描いて欲しかったよ。 「トロイ」もストーリーに納得できなくていまいちだったけれども、少なくともキャラクターの魅力はあったと思う。 イメージが違うんだろうけど、エリック・バナとかがアーサー王だったら個人的には嬉しかったのに。 (「トロイ」観に行って、オーリ(@パリス王子)のファンだったはずが、エリック・バナに転んでしまったのはこの私…。)
それでも、アイルランドの嵐や雪、土の冷たさなどは伝わってきて、ケルト好きにはたまらない。
ケルトを好きになったのは、大学1年の英語(皆受ける必須の英語)の講師がケルト神話を専攻している人だったから。 古語で書かれたケルト神話を教材に、ひたすらよくわからない内容を訳しているうちに、何故か妙に好きになった。 装飾品の描写とかがすごく綺麗だし、妖精やら魔法やら白馬やら、出てくるもの全てが幻想的で、紡がれる愛の詩を訳すのも楽しくて、言葉選びや並べ方にもかなり凝ったりして。
特に印象に残っている神話が、常若の国「ティル・ナ・ノグ」の話。
オシーンというアイルランドの王子が、永遠に命の続く妖精の国「ティア・ナ・ノグ」から来たという姫に出会い、あまりの美しさに恋に落ちる。 二人は姫の乗っていた白馬に乗って、ティル・ナ・ノグへ行き幸せに暮らすのだけれども、数年が過ぎた頃、彼は父王や友人に会いに故郷に帰りたいと言い出した。 実はティル・ナ・ノグで過ごす数年は、故郷では数百年に相当するのだという真実を聞かされてショックを受ける彼。 それでも故郷に帰りたいというオシーンを引き止めきれず、姫は、白馬からけっして地上へ降りないことは条件に故郷へ帰ることを許す。 けれども、変わり果てた故郷に驚き、自分を含め、生きていた時代が今や伝説としてしか知る人がいないという現実に打ちのめされたオシーンは、自分の家があった場所を目指すうちに、落馬してしまう。 一瞬にして魔法が解け、しわだらけの老人と化す我が身。 ティルナノグと彼を結ぶ唯一の存在、白馬も、跡形もなく消えてしまっていた。 年老いたオシーンは、二度と愛する姫に会うこともできず、誰も知る人のいないその時代を、ただ死んでいくの。
永遠の国、それが幸せとは限らないということ。 どんなに愛していていても、捨ててきた全てを忘れ去ることなどできないのだということ。 愛しているからこそ、真実を話せなかった姫の苦悩。 「常若の国」というのは世界中にあふれているストーリーだろうけれども、説教じみたメッセージがこめられているのではなく、ただ切ない愛の物語として語られているところが好きだった。
興味のない学生にはきわめて不評だった授業だけど、ケルト神話を研究していたあの先生、今も変わらず講師をされているのだろうか。
2005年05月15日(日)
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