unsteady diary
riko



 なにかのプロであること。

できるなら、仕事に誇りを持てたらいいよね。
「おまえは仕事がしたいのか?給料がもらいたいのか?」
答え―。
給料がもらいたい。
それは、生活してゆくため。
だけど、ほんとうにそれでいいの?
安定したいのだと、ただそれを口にするたび、どこかから
なにかが流れ出てゆく気がする。
それはたぶん大切なもので、でも正体はわからない。
見えないもの。
だから、無視しようと思えばできる。
でも、見えないからこそ、大切なんだと思う。


タクシードライバーの親子が日本からロンドンまで3ヶ月近い旅をする、お客をのせて走りきるという特別番組を、テレビ東京で放送していた。
面白い企画だったと思う。

(テレビ東京って、いわゆる6時からのニュース枠でただ一局、アニメを放送しつづけるという独自路線を貫き、あのポケモンで給料が払われてるようなところだったりするんだけど、企画力が優れてて、独自性の強い番組をやるんだよね。とにかく切り口が他の民放に比べて、格段に面白い。金をかけず、いかに面白い番組作りをするか、にかけてはとても上手いと思う。娯楽ばかりじゃなく、教養番組も、わりとつくるし。)

これ、東京のローカルだから、見た人少ないと思うんだけど、
タクシードライバーとしての誇りを持っていることがひしひしと伝わってきた。
ただ、飛行機でむこうに行って、パリとかをショッピングとグルメで紹介するだけの旅番組とは決定的にちがう。
アジアを横断するシルクロードは悪路が多い。
いかに安全に、客を運ぶ、車を運ぶか。
そこにプロとしての誇りがかかっているのだ。


なにかのプロであること、自分の仕事に誇りを持つこと。
それがきっとオトナであること。
生きる意味を持つこと。

わたしの好きな緒方恵美という役者さんが、昔ラジオでそんなことを言ってた。
いまでも、すごく心に残ってる言葉。
プロだから、妥協をしない。自分に恥じない仕事をする。
そう、彼女はファンに約束して。
事実、やってのけている。
役者だからってえらいんじゃない。
タクシードライバーだろうと、
役者だろうと、
自分の仕事にプロとしての誇りをもってやり通すから、かっこよくて。
惹かれるんだ。

理想だけじゃ生きてゆけないということくらい、さすがにわかっているつもりだけど、それでも給料をもらえるならなんでもいい、というふうにはまだ割り切れない。
私はとことん甘い「お嬢さん」らしい。
ずっと親のすねかじりだもんなあ…。

じゃあ、理想に突っ走るか、というとそうもいかなくて。
一方では、とりあえず女性の働きやすい職場、できるだけハードでない、年頃になっても肩たたきを受けないような職場を探していたりする。
どっちの価値観で突き進もうか、自分でも決めかねている。
こういう場合、私はとかく安全な道をとりたがるから、自分の意志をよくよく確かめないと、危ないの。
自分でも表面的には安全な路をとるべきだと思ってると思い込んでる、つまり、それが自分の意志のように、自分さえ欺いているときがあるから。
でも、そんなの長くは続かないんだよね。

あーあ。
自分が仕事のできる人間だと信じきれるなら、きっと興味を優先するんだろうな。
そうでないなら、やっぱり広くて安全な路をゆくべきか。


なにかをつくりたい。
だから、こうして、つくっている。
文章関係の仕事というわけにはいかないだろうけど、それでもなにかをつくる仕事をしたい。ただ、そこを突き詰められない。
なぜなら、つくる自分の能力に、ほんとうは自信が持てないから。
一からつくるようなオリジナリティはないんだもんなー。
作品に対して評価するのは好きだけど。
favorite wordsをコンテンツにしたのは、ただの我儘。
ああいう作業はわりと好きなの。
でも、それでお金をもらえるはずはないのだから、
やっぱりおとなしく、興味は趣味の域で収めとくのが無難だろうなー。

まわりからの変な期待。
昔の知り合いに会うたびに云われる、語られる、「私」の像。
見栄っ張りで外面のよい「私」が、一人歩きしてる。
それに、自分もひきずられてる。
だけどね。
私くらいの人間はどこにでもいるんだよ。
これじゃあ、だめなんだ。
この程度じゃ、だめなんだ。

そういう思い。
他の人にはないのかな?
それとも、私だけなのか。

2000年11月23日(木)
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