ビー玉日記 | きのう もくじ あした |
2004年03月03日(水) 課外授業 こどもの頃に満天の星空を見たことがある。 それほど東京から離れたところでなくてもあんな星空が見られたなんて、今考えると不思議なくらいだけど、その日は台風直撃の直前で、風が雲を一掃し、見えやすい条件であったことは間違いない。 星空を見て「こわい」と感じたのは、後にも先にもあの時限りだ。 何がこわかったのか、というのは説明が難しい。 あまりにもたくさんの星が瞬いていて今にも自分に向かって攻めてくるように近くに感じたのもあるけど、たぶん本能的に自然というものの大きさを感じて恐ろしくなったんだと思う。 目の前にあったのは、自分の想像すら越えた「宇宙」そのものだったのだ。 あんな星空をまた見に出かけたいと思う。 広いところに身を置いて、日々のいろんなことできゅうきゅう締め付けてるような自分自身を解放して、頭の中も心の中もからっぽにして、しばらくぼーっとああいうものを眺めていたい。 広い広い世界の中の、ちっぽけな自分。 長い長い歴史の中の、ほんの一瞬の人生。 そういうことを久しぶりに実感として感じたいと思う。 人間が出来て、何千万年になるか知らないが、その間に数えきれない人間が生まれ、生き、死んで行った。私もその一人として生まれ、今生きているのだが、例えていえば悠々流れるナイルの水の一滴のようなもので、その一滴は後にも前にもこの私だけで、何万年溯っても私はいず、何万年経っても再び生まれては来ないのだ。しかも尚その私は依然として大河の水の一滴に過ぎない。それで差支えないのだ。 (志賀直哉『ナイルの水の一滴』) |
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