ビー玉日記
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2003年05月04日(日)  さよならの儀式

怒涛の一日でした。
なんかもう忙しくて、よくわかんない。
なんで忙しいかというと、「女手が足りない」の一言に尽きる。
もうホント男って役立たず。
酒飲んでるのはいいけど、こっちは忙しいんだから自分で酌しろっちゅうねん。
笑顔の下でかなりぶち切れの私でした。

何しろ主な戦力は、母と叔母と私。
叔母(父の弟のお嫁さん)2人は運悪く足を痛めていてあまり動きがとれない。
イトコたちも働いてくれるんだけど、やっぱりそこは学生。
自分で何をしたらいいかというとこまでは気付かないので指示待ちロスが多すぎ。
つくづく葬式って大変だなと思いました。
これでかなり葬式のプロかもね。(いいのか、それで?)
それもこれも葬儀屋が使えないせいです。マジで腹立つ。
東京でやった時は何もしなくても全部やってくれたから楽だったんだよね。

ちょっと愚痴でした。

さて、ここからが本題です。

叔母が気を使って私をぎりぎりまで眠らせてくれた。
昨日までは年寄に合わせて(?)7時に叩き起こされて、夜はお風呂の順番を待って遅くて、睡眠不足だったからかなり助かった。

告別式は、滞りなく終了。
喪主代理の父のスピーチも、通夜の時と基本は同じだったけど、いいまとめ方でよかった。
グッジョブ。さすが営業マン。
これほど父のすることを認めたことは他にないかもしれない。

もう何度か肉親の葬式に立ち会っているけれど、一番涙が衝動的にあふれそうになるのは、出棺と骨拾いの時だ。
なんなんだろう。

出棺の時、昨日の冷たい感触が忘れられなくて、寒がりのおばあちゃんの首にスカーフを巻いた。
おしゃれだった祖母のために叔母がお気に入りの服と帽子とスカーフをお棺に納めていたのだ。
好きだったという蘭の花、母の日が近いのでカーネーション、ユリの花。
たくさんの花に埋もれていく祖母の体を目に焼き付けながら、私も年をとっても女としてきれいにしていようって思った。
おじいちゃんが、「よう頑張ったね」と祖母の顔を覗き込みながら話しかけていた。
そんな風に愛されて逝けるって、幸せだよなあ。

骨は、その人の生き様を表している気がする。
たくさん子供を生んだ曾祖母の時は、骨盤がしっかり残っていた。
今回祖母の骨はどうだったかというと、大腿骨が太くしっかり残っていたのが印象的だった。
私は足が強いと整体の先生に言われたことがある。
たぶん祖母譲りだな、と思った。

死者を弔う儀式というのは、以前は長ったらしくて同じことばかり繰り返して無駄なように思ってたけど、実は大事なステップなのだとわかった。
それは、生き残った人がその人の死を受け入れるために必要な期間と過程なのだ。
私は祖父母との心の距離がちょっと遠いままだったのでかなり客観的な視点で見ていたのだけど、ずっと近くにいて面倒を見ていた末っ子の叔母の様子を見ていると、それがすごくよくわかった。
少しずつ少しずつ死者との距離を離していって、段階を踏んで心に折り合いをつけていく。
そういうものなのだ。

葬儀が終わって家に帰り、おばあちゃんの祭壇の前で食事をする。
もうみんなすっぱり割り切っていて、体調の悪そうだったお坊さんの悪口なんか言って笑っていた。
(何しろこのお坊さん、マイク使って読経してたし、訓話の時に自分の体調の話なんかするんだもん。なんじゃそりゃ、でしょ?)

酒飲み一家の中でも一番酒豪の叔父さんが「ばあちゃんが俺に何か言いたそうなんだよな」と遺影を見上げては気にする。
「あれはね、みんなで平戸に行った時にるう子ちゃんが撮った写真なのよ」
と叔母。
「いい顔して。あの時気に入って焼き増ししてもらったのを伸ばしたと」
なんでも祖母は別の写真を自分で用意していたのだが、それがあまりにも若い時のものだったので変だったので、叔母が自分の気に入っていたこの写真を使ったらしい。
あの時のことは私も覚えてる。
祖父の喜寿だか米寿のお祝いで一族揃って平戸のホテルに泊まりに行った時、祖父母の部屋で二人並べて私がレンズを向けた。
メガネかけてるし、写真なんかよか、みたいなあんまり気乗りしないようなことを言ってた気がする。
確かにそう言われて見ると、今にも何かしゃべりそうな口をした写真だ。
「なんだ、孫に向かって言いよっとか」
叔父はほっとして言う。
「やましいことがあるからそんな風に思うんですよね?」
と私は笑った。
要するに飲みすぎってわかってるんでしょ。

初孫の特権でかわいがってもらったこともあるけど、小さいイトコたちが生まれてからは政権交代(?)で自然と距離が離れていた。
それでもやっぱりちょっと特別な気持ちってあったのかな、と今になってみると思う。

最後に言葉を交わしたのは正月の電話だったと思うけど、その前に私が踊りの写真を送った時、わざわざ私の家に電話をかけてきてくれた。
何を話したかは残念ながら記憶にないけど、うれしそうだったことだけ覚えてる。

ありがと、ばあちゃん。
最近ちょっと離れてたけど、結構私、好きだったよ。

最後に。
人間の行き着くところは、あの箱の中なんだ。
だから、生きてる間に思うことをしないとね。
一瞬一瞬を大事にしないとね。
箱の中に入った時、後悔で死んでも死にきれない人生なんか、やだ。
あんな風に穏やかな顔して死んでいきたい。


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