| ビー玉日記 | きのう もくじ あした |
2003年05月03日(土) 私のルーツ 祖母の顔は、まるで眠っているようだった。 最後は大分痩せていたそうだが頬に綿をつめていたのと、看護婦さんが薄化粧をしてくれていたので、病気の人のようには見えなかった。 本当に、今にも寝息が聞こえてきそうなくらい安らかな顔で、安心した。 その顔を見ていて、ああ私も年をとったらこんなふうになるんだな、と悟った。 私は母に似てると言われることがあまりない。 「笑うと似てるね」とか言われることはあるけど、顔のつくりや体質は完全に父方の血らしい。 かと言って父には似てるわけじゃなく、叔母によく似てるらしい。 祖母の死に顔を見た時、自分が祖母似であることに気付いた。 体に対し顔が小さいこととか、頬骨の高さとか。 考えてみたら目も(当然今は閉じているけど)似ていたと思う。 冷え性で寒がりなところとか。 おそらく性格も。 正直、母と祖母の関係があまりよくなかったこともあり、性格を認めるのはどうかとも思うけど、祖母の考えることが最近わかってきてたのは、やっぱり似てるからだろう。 祖母の遺体が横たわる仏間の壁にある祖母の母と祖父の母の遺影を見て、なんとなく彼女たちが迎えに来ているのを感じた。たぶんね。 霊感というより想像だろうけど。 ろうそくと線香の火を絶やさない。 それは、最後の対話の時間なんだろうか。 ちょっと不思議な感覚だ。 弔問客のお茶だしや弔電と香典の管理をしているうちにあっという間に遺体を運ぶ時間となる。 最後に母と私と一番下のイトコとで、メイクをする。 口紅とチークの色を入れたら、ホントにきれいだった。 祖父が「いつもしてるとわからないくらいうまく化粧をしてた」とつぶやいたのが耳に残る。 叔母が「少女のようだ」と泣いた。 男性陣の手でお棺に祖母を横たえて、ドライアイスを置く前に新聞紙をかけるのを見て、つくづく、人間の体は魂が抜けた瞬間からモノになるんだ、と思った。 口紅を塗る時に触れた祖母の頬の冷たさとか、感触を、当分忘れられないだろうと思う。 もうこの家に来ても、おばあちゃんはいないんだ、って思ったらちょっと切なくなる。 生きている間にもう1度来ておくんだった、って、足が遠のいていたことを残念に思う。 お通夜は車で5分くらいのところにある葬儀場で行った。 私は受付を担当したのだが、田舎の人との見解の違いには結構辟易した。 葬儀場のおっさんはマジ切れするし。 受付の向きが弔問客に対し明らかに変だったので動かしたところ(入ってくる客と同じ向きに立つ形だった)、「ここの人たちはみんなこれで慣れてるから元に戻せ」と言うんで、だったら仕方ないか、と戻したところ、他にも私たちがやりやすいように机の上を整理していたのが気に入らなかったらしく、 「お香典はその場で開くところもあるようだけども、ここではやらないからね」 「とんでもない。そんなの見たことないですよ!」 「いや、私は見たんですよ。勉強でいろんなところの式を見たもんで。都会ではそういうことをやるところがあってね」 都会……? 東京では見たことねーよ。(お手伝いの父の会社の男性と顔を見合わせる) 「佐賀で私は見たんでね」 佐賀かよ! せいぜい福岡って言ってくんない? いやー、まいった。 要するに、香典の額に合わせてお返しをするところがあるらしいんだけど。 知ってると思うけど、香典返し、お茶しかないから。 しかも、近所の人たちは、受付だけ大量に手伝いをよこした。 他のことは何も手伝わないで、受付。 5人も何すんだよー。 「私たち、手伝い頼まれたんだけど、いらなかったみたいね?」 とか厭味を言うし。ちっ。 普通通夜って言うと、決まった数時間の間に弔問客が訪れて、それぞれ焼香して出て行く、っていうスタイルのものだと思っていたけど、ここではちゃんと1時間式を行った。 司会あり、お坊さんの読経とお話あり、喪主の挨拶あり。 それだけ見ると、知らない人は「これは葬式?」と思うだろう。 司会者は「最後のお別れです」とか言ってるし。 じゃあ明日は何なんだ、と心ひそかに突っ込みを入れてみた。 この地域でもこういうお通夜を知らない人もいて、時間を過ぎて来たら式典をやっていてびっくりした、って感じの人も。 ちょっとお焼香のつもりで来て1時間も拘束されたら、確かに迷惑だろうな、と思う。 通夜が終わってしばらく、私は一人で受付の番をしていた。 みんなは別室で食事やおしゃべり。 おばあちゃんにお茶をあげて、私もお茶とお菓子をいただいた。 最後のお茶の時間と言ってもいいかもしれない。 まるぼうろ、はおばあちゃんのお菓子。 おばあちゃんの家に行くと必ずあって、子供の頃から食べていた。 そんなことを思いつつ。 その夜はくたくたで、夜中2時くらいに家に戻って、お風呂に入って床についた。 |
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