|
|
■■■
■■
■ アナンシの血脈(上・下)/ニール・ゲイマン
『アナンシの血脈(上)』/ニール・ゲイマン (著), Neil Gaiman (原著), 金原 瑞人 (翻訳) 単行本: 287ページ 出版社: 角川書店 (2006/12) ISBN-10: 4047915343 ISBN-13: 978-4047915343 商品の寸法: 19 x 13.6 x 2.6 cm 内容(「BOOK」データベースより) 何をやっても冴えないチャーリーは、父親の葬儀の日に衝撃の事実を告げられる。「あんたの父さんは神だったからね―」そしてある日、神の血を色濃く受け継ぐ、スパイダーという名のきょうだいが現れて、平凡だったチャーリーの人生は音を立てて崩れはじめた。アフリカ神話の神の血脈に連なる二人の青年。その正反対の生き方がぶつかって巻き起こるとんでもない事件とは…?!ありえない現実と真に迫る幻想が交錯する、ジェットコースター・ストーリー。
『アナンシの血脈(下)』/ニール・ゲイマン (著), Neil Gaiman (原著), 金原 瑞人 (翻訳) 単行本: 317ページ 出版社: 角川書店 (2006/12) ISBN-10: 4047915351 ISBN-13: 978-4047915350 商品の寸法: 19 x 13.2 x 2.8 cm 内容(「BOOK」データベースより) 何もかも正反対のきょうだいスパイダーに婚約者を寝取られ、仕事もめちゃくちゃにされ、しまいには横領の濡れ衣まで着せられたチャーリー。スパイダーを追い出すために「世界のはじまり」で、ある契約を交わしたが、そこには大きな罠が隠されていた。一方、殺人事件を追って南の島に飛んだ女刑事とチャーリーの元婚約者、そしてその母まで巻き込んで最悪の事態が発生。ダメ男チャーリーに残された唯一の手段は…「歌」?!世界19カ国で大ヒットを記録した、ゲイマンのベストセラーがついに上陸。
ジョン・スタインベックの『チャーリーとの旅』を読み始めて、すごくホッとしている。スタインベックは本当に文章の巧い作家だから、わざわざ笑わせようと意図しなくても、自然に面白いと思える。
ニール・ゲイマンの『アナンシの血脈』は、笑わせようと意図して書いているのがわかってしまって逆に笑えないし、そもそもイギリスのナンセンスは好きではないので、ちょっとうんざりした。
イギリスのナンセンス文学は『不思議の国のアリス』や『マザーグース』などが良く知られているが、ゲイマンの『アナンシの血脈』もその雰囲気がある。
スタインベックとゲイマンを比較するのは、ジャンルも違うので無理な話とは思うが、やはり落ち着いたちゃんとした文章は読んでいて気持ちがいい。
これは多分に翻訳の問題もあって、『アナンシの血脈』の翻訳が金原瑞人氏と知った時に感じた嫌な予感が、そのまま当たってしまった感じだ。もちろんヤングアダルト専門の金原氏の翻訳がいい時もあるのだが、近頃では合わない時のほうが多い。
『アナンシの血脈』はホラーっぽい部分を生かせば、イギリスのスティーヴン・キングにも成り得ただろうにと思ったりもしたが(キングは好きではないが偉大だと思う)、とにかく翻訳の文体が子供っぽくて、せっかくのそうした部分も台無しになってしまっている。私はニール・ゲイマンは好きなので、かなりがっかりだ。
金原氏自身も、これは大人向けのファンタジーだとあとがきに書いているのだから、ヤングアダルト向けっぽい翻訳には顔をしかめざるを得ない。何よりファンタジーの翻訳なら何でもかんでも金原氏という出版社の何も考えていない態度に腹が立つ。
「ハリー・ポッター」が売れるのは、子供が主人公のファンタジーではあるが、あえて子供向けに訳していないという理由もあると思う。ファンタジーを読むのは子供であり、ゆえにファンタジーの訳は子供っぽくていいのだというのは、全くの勘違いだ。子供だって、ちゃんとした文章なら読めるはずだ。
イギリスのナンセンスは、文学的センスのある訳なら引き立つが(無意味なナンセンスを日本語に訳すのは至難の技だが)、そうでないと筒井康隆のドタバタSF風になってしまう。私がイギリスのナンセンスを好きでないのも、あまりいい訳にお目にかかっていないせいかもしれない。
ニール・ゲイマンを読むなら、できれば是非原書で!と思う。
2007年04月18日(水)
|
|
|