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 To Kill a Mockingbird/Harper Lee

出版社より
この美しい小説を、世のすべての親たちに捧げる。
舞台はアメリカ南部の古い町。母なきあとの父と兄妹の心にしみる愛情をヨコ糸に、婦女暴行の無実の罪をでっちあげられた黒人の若者をタテ糸に、見事に織りなした人生のメロドラマ。1961年度のピュリッツァ賞に輝き、11カ国に翻訳され、すでに数百万部を売りつくし、95週延々2年にわたって連続ベストセラーを続けた名作である。


主人公スカウトの目を通して描かれた、アラバマ州メイコーム(架空の町)の人々の暮らしや、人種差別の実態。父アティカスと兄ジェムとの絆の深さ。人間とは、家族とはどうあるべきなのか?といったことを考えさせられる。

エピソードごとに感動して胸がつまり、ページがぼやけてくる。素直なスカウトの心と、誠実で責任感の強い父アティカスの態度、大人になろうとする兄ジェムの頼もしさに、いつしか引き込まれ、一緒に泣いたり笑ったりするようになる。

最も大きな人種差別というテーマは、全編を通じて流れており、「相手の身になって考えること」という大事なことを教えてくれる。お化け屋敷の住人である、ブー・ラッドリーの視点に立った時のスカウトは、そのことを身をもって知る。何度読み返しても、新たな感動を呼び起こす、素晴らしい作品。

私はたまにしか「お薦めの本」というのは紹介しないのだが、これはそういった本の中のひとつ。何度読んでも感動。深くて濃い物語。
じっくり味わって読み、父アティカスの言葉を胸に刻み、ジェムやスカウトの成長とともに、人間のあるべき姿を考える。こういった「急いで読んではいけない本」が、たまにある。そういった本は、間違いなく名作だと思う。

人種差別の大きなテーマの中で、父アティカスの正義感と強さに、息子ジェムと娘スカウトが、尊敬の念を持って対応している姿に、現在では数少ない親子の信頼とか絆といったものを見ることができる。

子どもたちは、大人の人種差別の中で、何が正しいのか、何が間違っているのか、それぞれの視点で見ていく。「絶対に正しくない」こう言えるのは、何のしがらみもない子どもだからだという大人の諦めも見えて、世の中の理不尽さに身震いするほどだ。しかし、スカウトが謎の隣人ブー・ラッドリーの視点に立ったとき、彼女は世の中のことを悟り、人の立場に立って考えることの重要さを、私たちに教えてくれる。


2004年10月25日(月)
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