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■ 奴らは渇いている(上・下)/ロバート・R・マキャモン
『奴らは渇いている』(上)/ロバート・R・マキャモン 内容(「BOOK」データベースより) 最近、ハリウッドの墓地では、墓が掘りおこされ、棺桶が盗まれるという怪事件が発生していた。この知らせを聞いた警部パラタジンは慄然とする。彼が子供のころハンガリーで体験した吸血鬼騒ぎと同じだったからだ。アメリカの最先端を行くロサンジェルスに吸血鬼が?しかし謎のプリンス・コンラッド・ヴァルカン率いる一大勢力はすでにこの巨大都市を制圧しようとしていた―。ロバート・マキャモンが恐怖小説永遠のテーマ〈吸血鬼〉に新風を吹き込んだ超大型冒険小説。
『奴らは渇いている』(下)/ロバート・R・マキャモン 内容(「BOOK」データベースより) ロサンジェルスの全住民を吸血鬼とすべく、ブリンス・コンラッド・ヴァルカンは、史上空前の砂嵐を巻きおこして市街を外界から遮断。その間にも殺人鬼や、暴走族を手下として、吸血鬼の勢力を刻々増強させていく。敵の正体を知る警部パラタジン、神父シルヴェーラ、怪奇映画ファンの少年トミーらは、砂嵐をついて敵の本拠クロンスティーン城に乗り込む。吸血鬼と人間の決戦が始まった。まるでスピルバーグ映画のようなスケールと迫力で迫るマキャモン渾身の超大型エンターテインメント・ホラー。
※画像は原書 『They Thirst』 の Time Warner Paperbacks 版
すごく面白くて、下巻は1日で一気読み。他の用事など一切おかまいなしで読んだというのは、珍しい。結構スプラッターだけれど、そこはマキャモン、ホラーだけど、ヒーローものでもあって、最後はやっぱり善が勝つ。ほかの作家のホラーでも、ヒーロー的な人物は出てくるが、マキャモンの描くヒーローは、とにかく私好みなのだろう。今回のヒーロー、パラタジン警部の「絶対に守る!」という責任感は、私好みだ。
もう一人、ヴァンパイアの王ヴァルカンをやっつける重要な役がシルヴェーラ神父で、この人の自己犠牲、人類を守るのだ!という意志の強さにも脱帽。神父は不治の病ルー・ゲーリック病にかかっており、その命を人のために役立てたい、どうせ死ぬ運命なら自分が犠牲になろうというのは、『遙か南へ』 の主人公が癌で余命いくばくもないという設定を思い出した。
また、ヴァンパイアが根城にしているクロンスティーン城とは、ホラー俳優オーロン・クロンスティーンの持ち物だったという設定だが、このクロンスティーン、どこかで見た覚えがあると思ったら、短編集 『ブルー・ワールド』 に収められた「メーキャップ」に出てきた名前だった。実在の俳優かどうか確認していないが、実在だとすれば、マキャモンのお気に入りなのだろうか。
この話の中には、ジャック・ザ・リッパー(シュワちゃんの映画 「ラスト・アクション・ヒーロー」 にも登場した殺人鬼)や、ヴァン・ヘルシングの名前も出てくる。面白いのは、マキャモンが自分の作品 『Bethany's Sin』 を自らこきおろしていること。マキャモン自身、不本意な作品ということで、すでに原書でも絶版なのだが、この部分は笑えた。
・・・『ビサニィズ・シン』とかいう題名のつまらない本を読んで過ごしたのだ。あまりの退屈さに、第四章まで読んだところで放り出してしまうような本だった。・・・
最後に、舞台であるロサンジェルスが大地震に見舞われ、ヴァンパイアのほとんどが(多くの人がヴァンパイアにされていたのだが)死滅する。不死のはずのヴァンパイアがなぜ?と思うが、実はヴァンパイアは、日光と同じように、海水(聖水と同じ働きがあるが、聖水よりも神のパワーが強いらしい)に弱かったのだ!海水を浴びると、煙を上げて消えてしまうのだ。つまり、大地震に伴う大津波が彼らを消したわけだが、まさかこんな大スペクタクルな話になるとは思ってもいなかった。
しかしここで思ったのは、こういった災害時のアメリカ軍の行動の早さだ(ロサンジェルス以外は、まだヴァンパイアには襲われていなかった)。生き残った人たちを軍の基地に避難させ(基地なら水も食料も薬もすぐにあるわけだ)、24時間以内に、すでに100個の仮設住宅を建てたりしている。たしかにこれは小説だし、土地の事情とかもいろいろあるだろうが、こういうのを読むと、新潟の地震があった時期だけに、この寒空に放り出したままの日本政府の対応が信じられない思いだった。
この結末は、ヴァンパイアが全て消えたという結末ではないので、まだこの世の中に、彼らは存在しているということになっている。『奴らは渇いている2』が書かれてもおかしくない結末だ。途中でなんだか怖くなって、十字架のペンダントを探し出し、それを身につけて本を読んでいた。映画の 「ヴァン・ヘルシング」 なんかよりずっと怖かったし、パラタジンやシルヴェール神父といったヴァンパイア・ハンターは、それよりずっとカッコ良かった。怖かったけれど、すごく面白かった!
2004年10月29日(金)
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