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■ The Runaway Jury/John Grisham
内容(「BOOK」データベースより) 夫が肺癌で死んだのは、長年の喫煙が原因だ―未亡人はタバコ会社を相手どって訴訟を起こした。結果いかんでは同様の訴訟が頻発する恐れもある。かくして、原告・被告双方の陪審コンサルタントによる各陪審員へのアプローチが開始された。そんななか、選任手続きを巧みにすり抜け、陪審団に入り込んだ一人の青年がいた…知られざる陪審制度の実態を暴く法廷サスペンスの白眉。
※DVD 『ニューオーリンズ・トライアル 陪審評決 プレミアム・エディション』
これは登場人物が多くて大変!邦題が『陪審評決』というように、陪審員がテーマの話なので、少なくとも陪審だけで12人。補欠も入れれば15人。そこに原告、被告、証人、両陣営の弁護士軍団、陪審コンサルタント、両陣営で使っている調査会社の人間、各陪審員の家族や恋人、友人などなど、これって誰だっけ?というのがどんどん出てくるので、思わぬ苦戦。ちょっと目をはなした隙に、どこの誰のことが書いてあるのかわからなくなるといった具合。グリシャムは、もともと特に好きな作家ではないが、映画「ニューオーリンズ・トライアル」の原作(ジーン・ハックマン出演)だし、南部映画祭にちなんで・・・という思いもあって、読み始めたのだけれど、なにしろ登場人物が多すぎる!
映画のタイトル「ニュー・オーリンズ・トライアル」からも、邦訳のタイトル「陪審評決」からも、本書の内容は全然わからないだろう。いい加減なタイトルをつけるものだ。しかし邦題からは、陪審員がテーマになっていることくらいはわかる。
日本には陪審制度というものがないから、あまりぴんとこないが、この小説を読むと、陪審員次第で判決がどうとでもなってしまう恐ろしさがわかる。だからこそ、陪審員を選出するにも細かい規則があるし、裁判中は陪審員が拘束されたり、はたまた陪審コンサルタントなどという商売も成り立つ。
結局この話は、裁判の行方が重要なのではなく、その陪審制度を逆手にとった犯罪の話なのだ。最初、陪審員のひとりであるニコラスが主人公かと思って読み進めていくのだが、途中から、ニコラスはひとつの駒にすぎないことがわかってくる。
裁判シーンは長い。タバコの害に関する学術的な研究だとか、医師や科学者の証言などなど、ちょっとうんざりという部分も。けれども裁判ものは、とにかくどちらが勝つのだろうという単純な好奇心があるから、そこはそれなりにやり過ごし、結果に向かって読み進められる。
本書の読みどころは、陪審員を選ぶ過程と、裁判の進み具合によって変わる周囲の動きだろう。タバコ会社が負ければ、社会は大きく動く。そこに目をつけた真の主人公の頭脳プレーといったところが、この話の核になるのだろう。
2004年06月21日(月)
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