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 ミステリー・ウォーク (上・下)/ロバート・R・マキャモン

ミステリー・ウォーク〈上〉/ロバート・R. マキャモン (著), Robert R. McCammon (原著), 山田 和子 (翻訳)
内容(「BOOK」データベースより)
ビリー・クリークモアが母から受け継いだのは、死者の魂を鎮める能力だった。だが、人々は彼に冷たく、疑いに満ちた目を向ける。そんなある日、伝道者ファルコナーが、治癒の奇蹟を起こす息子ウェインを連れて町にやって来る。だが、ビリーが伝道集会で見たものは…?『少年時代』『遙か南へ』を経て、久々の長編『魔女は夜ささやく』に至るマキャモン文学の源流、待望の復活。

ミステリー・ウォーク〈下〉/ロバート・R. マキャモン (著), Robert R. McCammon (原著), 山田 和子 (翻訳)
内容(「BOOK」データベースより)
伝道者ファルコナーの迫害により、故なき制裁で重傷を負った父。ただ耐え忍ぶ母。二人を残しビリーは旅立つ。だが、邪悪なる影はいたるところに潜む。さらに、教団を継いだウェインはビリーを悪魔の化身と信じ、彼の命を狙う。だが、二人は知らぬまま、互いに運命の糸を手繰り寄せていた…。善と悪の対決を少年の成長に託して描く幻の傑作ダーク・ファンタジイ、感動の終幕へ。



やっとマキャモンが読める!と喜び、とりあえず手元にある本の出版順にと思い、『ミステリー・ウォーク』から読み始めたが、すぐに引き込まれて、本を閉じるのが辛い。それに、この文庫版は復刊されたのだろうか、2003年の出版になっているのだが、あとがきには青山先生の解説が載っている。それを読んだら、まるで授業を受けているような感覚に陥った。

アメリカ南部についての言及や、はっきりと何年とは書いていないけれども、文中に出てくる音楽や出来事で、時代が明確に記されているなどというのは、何度か聞いたことがあるなと、懐かしく思い出した。

『ミステリー・ウォーク』は、これまでに読んだマキャモン作品よりも、より南部色が濃く、いかにも南部の話といった出来事がたくさん出てくる。早稲田で開催される「アメリカ南部映画祭」に合わせて読むには、ちょうどいいかも。

この作品は、死者の霊と向かい合ったり、「シェイプ・チェンジャー」と呼ばれる邪悪な存在と対決したりと、結構不気味な世界で、怖がりの私としては、正直言って怖かったのだけれど、マキャモン作品の常で、主人公の精神的な強さ、善なる魂に救われた。得体の知れない「邪悪な存在」が現れるというのは、前に読んだ『スワン・ソング』を思い起こさせた。

『スワン・ソング』と大きく違うところは、光と闇の世界を、双子の兄弟で分け合ってあるところ。主人公ビリーは死の世界に通じ、兄のウェインは生の世界を操ることができる。だが、ウェインはその使い方を間違っていた。兄弟であるとも知らずに対決に向かう二人だが、ビリーのほうが先にそれを知り、最後に和解し、ウェインが自らを犠牲にして、ビリーを助けるところは感動。

マキャモンは、いつも善と悪を描いているが、どれだけ残虐で悲惨な場面が描かれていようとも、必ず善が報われているのが救い。本当に彼はいい人なのだと、読むたびに毎回思う。自分がこの社会の中で、悪意の塊と戦わなければならないようなとき、マキャモンの作品は、心の拠り所となる。この社会には、悪意の塊や邪悪なものがたくさんある。そういうものに負けないためにも、マキャモンの本が読みたい。マキャモンにもっと本を書いてもらいたい。

マキャモン作品の翻訳はみな良いので、できれば翻訳で読みたいのだが、絶版や在庫切れが多くて、これまでになんとか集めた本以外は、原書で読まなくてはならないというのが残念。

2004年05月22日(土)
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