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 レベッカ (上・下)/ダフネ・デュ・モーリア

レベッカ (上巻) 新潮文庫/デュ・モーリア (著), 大久保 康雄
カバーより
モンテ・カルロで知り合った英国紳士に望まれ、マンダレイの邸に後妻にはいった“わたし”を待ち受けていたものは、美貌と才智に包まれた先妻レベッカの不気味な妖気が立ちこめ、彼女によって張りめぐらされた因習と伝統に縛られた生活だった・・・。不安と恐怖に怯えながらもひたすらに愛を捧げようとする、若く純粋な女性の微細微妙な心理を追及したミステリー・ロマン。

レベッカ (下巻) 新潮文庫/デュ・モーリア (著), 大久保 康雄
カバーより
仮装舞踏会の翌朝、海中に沈められていたレベッカのヨットから、埋葬されたはずの彼女の死体が発見された。はじめて夫から聞かされる彼女の死にまつわる恐るべき真実。事件は、レベッカを死の直前に診察した医師の証言から急速に展開し、やがて魔性の貴婦人のベールが剥がされる・・・。息詰る物語の展開の中に、ロマンの香りを織り込んだすぐれたサスペンス・ドラマである。



冒頭の情景描写は、いつまでこれが続くのかしら?と心配になったほどだったが、途中、本題に入ったあたりからは、一気に読ませてくれた。

亡きレベッカのお世話をしていたデンヴァース夫人、怖いです。彼女の気持ちは理解できるのだが、なんて悪意に満ちた、残酷な人だろうと思った。人が傷つくことがわかっていて、というか、傷つけることを目的に、相手が傷つくことを知っていて、故意に辛らつなことを言うという感じ。

こういう人は実際にもよくいるし、そういうことを言われたという経験もあるが、知らずに傷つけてしまうのではなく、「故意に」というところに、人間の邪悪さを感じる。他人の幸せを妬み、悪意でしか見ることができない不幸な人間だ。その敵意に満ちた激情は、ほとんどヒステリックで、幽霊などより恐ろしい。

しかい、デンヴァース夫人の場合、あとで自分の気持ちを素直に告白しているだけましかもしれない。何も言わず、ただ憎悪だけを投げつけている状態は、なんともぞっとする。

主人公については、姿を現さないレベッカであると思うが、一見主人公に見える「わたし」の名前は何だったのだろう?読み落としたか、忘れたかと思い、再度ざっと見直したが、結局名前は出てきていなかったと思う。そんなところからも、主人公はレベッカなのだと思える。

すでにこの世の人間ではないのに、その存在だけが、生きている人たちの心にリアリティを伴っていつまでも残っている。レベッカの亡霊などは一切出てきていないのに、あたかも目の前に亡霊がいるかのような恐怖を感じさせる、デユ・モーリアの手腕は、見事だ。

余談だが、これには別の作家による続編がある。『ぼくはお城の王様だ』の著者であるスーザン・ヒルによるもので、『ぼくは・・・』のほうも、お薦め本に入れているくらいのすごい本で、人間の邪悪さというものにショックを受けたのだが、この人が書く続編なら、そのあたりも上手く書けているのではないかと。

<続編>
『Mrs. De Winter』/Susan Hill (著)
マスマーケット: 416 p ; 出版社: Harpercollins ; ISBN: 0380721457 ; Reprint 版 (1994/11/01)

From Publishers Weekly
This sequel to Daphne du Maurier's Rebecca depicts the further adventures of Maxim de Winter and his second wife.

この作品は、映画は観ているけれど・・・という人は多いだろう。私は残念ながら観ていないが、マンダレイの景色などは(実際のものではないにしても)、ちょっと参考に観てみたい気がする。

なんとなく、レベッカが世間で言われているような素晴らしい女性ではなかったのだろうという予測はしていたが、なかなかに曲者だった。さすがにあそこまでとは思っていなかったけれど。でも結末が、どうなるのだろうかとハラハラしたわりには、少し物足りなくて、ああ、火事になったのだろうなあと思ったものの、それでどうなったのか、これからまだ続きそうだといった感じを受けた。

そんなところからも、続編が生まれたのだろう。こういった古典の続編は結構あるようで、『風と共に去りぬ』や、『自負と偏見』(『高慢と偏見』)、それにジャンルは違うが、『吸血鬼ドラキュラ』の続編など、みな違う作家が書いている。

別人の書いた続編は読まないと決めていたが、「ドラキュラ」の続編は案外面白かったし、今回も、先に書いたように続きがありそうな終わり方だったので、結末の物足りなさを補うために、読んでもいいかと思っている(すでに購入済み)。読まないほうが良かったと思うかもしれないが。

ところで、「マダム・デ・ウィンター」という言い方、これは「マダム・ド・ウィンター」とは読まないのだろうか?などと、重箱の隅をつつくように、細かいところばかりを言っているが、これもずっと気になっていたこと。(^^;

2004年05月17日(月)
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