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■ 小説家を見つけたら/ジェームズ・W・エリソン
内容(「BOOK」データベースより) NYの下町ブロンクスに生まれ育った16歳の高校生、ジャマール・ウォレスには誰にも言えない内緒の愉しみがあった。それは文章を書くこと。学校では文学少年である一面はまったく見せない彼だったが、読書から得た知識の豊富さと書くことへの熱意は誰にも負けないものがあった。そんな彼がある日偶然にも出会ったのは、処女作でピューリッツアー賞を受賞し、その後、姿を消した大作家ウィリアム・フォレスターだった。フォレスターは自分のことを絶対に口外しないことを条件に、ジャマールへの指導を引き受けることになるが…。
これは映画のノヴェライゼーションで、脚本をもとに小説化されているので、作中の小説家ウィリアム・フォレスターは、どう想像してもショーン・コネリーでしか有り得ない。先日読んだ『プレシディオの男たち』も同様で、やはり映画のノヴェライゼーションは、その配役の俳優以外には考えられなくなってしまうのが難。とはいえ、内容はなかなか良かった。
この小説家は、かなり偏屈な小説家なので、個人的にはジーン・ハックマンでもいいんじゃないかと思ったけれど(黒ブチの眼鏡をかけてほしい)、ウィリアム・フォレスターという名前もなんとなくイギリスっぽいし(アメリカの作家、ウィリアム・フォークナーからとってるのか?とも思ったが)、年齢的にもすでに70歳を越えているので、やはりショーン・コネリーのほうがいいのか・・・。
主人公のジャマールは頭もよく、その上バスケットボールの才能にも恵まれており、ブロンクスの公立学校から、奨学金をもらって有名私立学校へと転校するのだが、そこでは教師による理不尽なイジメが待ち受けており、ジャマールが書いた小説が素晴らしいものだからこそ、貧乏な黒人の少年が書いたとは思えないという理由で、大切なバスケットの試合にも出られないような状態に追い込まれる。
フォレスターと喧嘩をして、自分は小説家などにはならず、バスケットの選手になって大金を稼いでやるのだと思い、教師の条件をのんで、文章を剽窃したとして謝罪文を出す決心をするのだが、結局フォレスターとのことを秘密にするという約束を守るため、バスケットの試合を放棄してしまう。
最後に助け舟を出したのは、人前には絶対に出ないというフォレスターだった。全校生徒の前で、フォレスターはジャマールを弁護したのだ。二人の間には、固い友情、あるいは父と息子のような愛情が存在しており、それが偏屈なフォレスターを動かしたというわけだ。
ジャマールがフォレスターの指導によって才能を開花させていく様子や、フォレスターを父のように思い、気にかける心に感動する。フォレスターは偏屈な年寄りなので、なかなか心を開かないが、彼はすでに自分の死期を知っていて、自分の成し遂げられなかった夢を、ジャマールに託していたのだ。フォレスターの死後、彼の新作の原稿を受け取ったジャマールは、そこに素晴らしいものを発見する。フォレスターが、いかにジャマールの才能を評価していたか、いかに彼を信頼していたかが、その一場面で鮮やかに浮かび上がる。
映画のノヴェライゼーションなので、文章がどうこうとは言えないが、ストーリーは良かった。最後はやはり感動する。
2004年04月15日(木)
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