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 Ruby Holler/Sharon Creech

ハーパー・コリンズのパリパリ本(ページをめくるとパリパリ音がしてうるさい本)なので、お風呂の中で読んでいた。お風呂用なので軽いものをと思ったが、予想は外れず、ほんとに軽かった。というか、シャロン・クリーチに内容の濃いものを期待するほうが間違っているとは思うが、あとに何も残らなかった。


双子の孤児ダラスとフロリダは、生まれたときから孤児院育ち。孤児院のトレピッド夫妻は、厳格で理不尽な大人。イジメともとれる彼らの厳しい躾に、この話はあのレモニー・スニケットの、不幸な孤児たちを描いた<不幸な出来事>シリーズのような話なのか、はたまた同じ孤児院話の『Molly Moon's Incredible Book of Hypnotism』のようなものなのかと思ったが、全然似ても似つかない。

ダラスとフロリダは「Trouble Twins」で、何度か養子に出されたが、どの家でももてあまされて(ダラスとフロリダが悪いわけではないのだが)、結局、毎度孤児院に戻されるのだった。そうこうするうちに孤児院では最年長。いつか孤児院を逃げ出して、列車で遠くに行こうというのが二人の夢だった。

夏休みになり、二人は「Ruby Holler」という大自然に囲まれた土地に暮らすティラーとセアリーという老夫婦の家に休みの間だけという条件で引き取られるが、孤児院とはまったく勝手の違う生活に、どうせまたすぐに孤児院に戻されるに違いないと思い、近いうちに逃げようと考えていた。

ところが、ティラーとセアリーは二人を気にいり、それぞれが計画していた旅に連れて行くことになる。その間に孤児院のトレピッド氏が、家の周りにある石の下に隠したお金を盗もうと企む。その企みを手伝うのが、謎の「Z」という人物なのだが、彼は二人のものと思われる出生証明書を見て、彼らが自分の子であることを知り、逆にトレピッドをわなにかける。

結末ははっきりとはわからない状態で、この先どうなるのか不明。結局ダラスとフロリダは、ティラー夫妻の家を我が家とも思えるほどになっていたということなのだが、はっきりと養子になるというところまでは書かれていないし、実の父親である「Z」氏の動向もよくわからない。この子たちは幸せになったのだろうか?

話が進んでいく間に、登場人物それぞれの過去が語られる。それはいいとしても、全体がなんとなく教訓めいた感じがして、どうも馴染めない。

例えば、エリザベス・ギャスケルの短編など、いかにも教訓めいたものもあるが、あれはあれで、作者が対象をつぶさに観察し、それを描くことで、自然に教訓を生み出しているのだが、これは作者が意図して教訓を書いているように思える。だからなるほどと納得できない部分がある。

子どもを叱るばかりが躾ではないけれど、まったく叱らないのもどうかなと思ってしまった。例えば、ダラスがだまって果物を入れる青いボールにミミズを入れてしまったのだが、ティラー夫妻は怒らなかった。人のものを借りるときには、使ってもいいかと聞くものだくらいは言ってもよさそう。私だったら、無断で果物用のボールにミミズを入れられたら、子どもだろうが、大人だろうが、絶対に怒る!ちなみに、この子達は13歳。言葉のわからない赤ん坊ではないのだ。

登場人物それぞれの個性があまりなくて、子どもたちはこの子たちでなくてもいいだろうし、ティラー夫妻のような立場の人間も、べつにティラー夫妻でなくてもいいだろうというくらいに、それぞれの存在感がない。どうしてもこの子達でなくては!という強い思いが感じられない。それと、この話に実の父親「Z」氏の存在は必要だったのか?と思う。

2004年04月16日(金)
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