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■ When Zachary Beaver Came to Town/Kimberly Willis Holt
内容(「MARC」データベースより) ある日、世界一巨漢の少年が現われて、ぼくの中で何かが大きく変わっていく…。少年たちのひと夏の思い出をせつなく描く、愛と友情の物語。1999年ヤングアダルト部門で全米図書賞受賞。
<参考・邦訳> ザッカリー・ビーヴァーが町に来た日/キンバリー・ウィリス ホルト (著), Kimberly Willis Holt (原著), 河野 万里子 (翻訳) 価格: ¥1,700 単行本: 261 p ; サイズ(cm): 182 x 128 出版社: 白水社 ; ISBN: 4560047707 ; (2003/09)
これはいいな。すごく面白いという部類ではないが、なんだか懐かしい感じのする、古き良きアメリカという雰囲気。少年ものは好きだし、主人公の少年も淡々としていていい。「Super Mex」と呼ばれたリー・トレヴィノが全英オープンで優勝した年と書かれてあったから、1971年か1972年の話。こういうことをわざわざ調べるようになったのは、青山先生の授業の名残り。
まだ半分も読んでいないが、これが全米図書賞を受賞したのは、すごくわかるような気がする。面白い本というのは、やっぱり書き出しが違う。それに、登場人物たちのキャラもいい。
主人公のトビーの母親は、カントリーソングのコンテストに出るために出かけたが、コンテストに落ちてからも帰ってこない。歌手になるというのだ。トビーは周囲に嘘をつく。コンテストの会場が火事になって、コンテストは中止になってしまい、母親はコンテストがまた開催されるのを待っているのだと。
心の中に、母親がずっと帰ってこないのではないかという不安と寂しさを抱えたまま、トビーはカルとの友情の日々をすごす。年上の女の子に恋をして、胸がキュンとする思いも味わう。
そして、タイトルのザッカリー・ビーヴァーは、「世界一の巨漢」という見世物の名前だ。最初は興味本位で見に行っていたトビーとカルも、次第に彼に友情を感じるようになる。世界中を旅しているのに、ほとんどトレーラーの外に出たことがないザッカリー。最後にザッカリーを連れて皆でピクニックに行き、ザッカリーが野原の真ん中で、空を見上げていることろは感動的だ。
見たこともないアメリカの1970年代の風景が描かれているのだが、その光景がありありと目の前に浮かんでくるような、そんな文章だ。派手なところもなく、ただ登場人物の心情を日常生活とともに描いている。そんなモノクロームのような風景に、時折色を添えるエピソードがはさまれる。
欧米の小説には、よく歌詞が引用されているが、ほとんど何の曲か分かったためしがない。曲名を見て初めて、そうなのかと思う程度だ。ところが、これには見ただけで曲名が分かった歌詞があった。カーペンターズの「Close To You」だ。カーペンターズが好きだというのもあるが、ここで初めて、私は70年代の人間なのだと知った次第。その前でもないし、後でもない。この年代なのだと実感した。そういった意味でも、なにか懐かしい思いのする話だった。
2004年02月26日(木)
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