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■ ドッグヴィル(B+)/ラース・フォン・トリアー
カバーより ロッキー山脈の麓、孤立した町ドッグヴィル。わずか22人が貧しい生活を送っている。ある日、ギャングに追われる若い女グレースが町に迷い込み、医師の息子トムのはからいで彼女をかくまうことに。不審がる住人たちがそのために出した条件とは「2週間でグレースが町の全員に気に入られること」というものだった。
これはあっという間に読み終えた。表紙にニコール・キッドマンの顔がついているやつ。この人、きつい目といい、薄い唇といい、意地悪なんだろうなあ、性格悪そうだよと前々から思っていた。
『ドッグヴィル』は、そのニコール・キッドマン主演で、昨年映画化された。冒頭は、なんでキッドマンなんだろう?と思っていたが、最後に、なるほどこれはニコール・キッドマンにぴったりだ!と思った。この人やっぱり恐ろしい。
主人公のグレースの得体が知れないところが気になって、どんどん読み進んでしまうのだが、「2週間で町の全員に気に入られること」というある種ものすごくうっとうしい条件に、なぜグレースが従ったのか、体を張ってまでその条件に従う理由は何なのか?よほどの犯罪を犯したのだろうと思っていると、最後にとんでもない事実が判明する。
しかし、グレースが純粋にこの小さな町を好きになったとは思えないのだが、一応表面上そういうことになっている。小さな町にとって、よそ者はどこでも疎外されるものだが、それにしてもこの町の人間は、誰一人まともな人はいないと読みながら感じる。けれども、ある意味で世間知らずな娘だったグレースは、そこで彼女の価値観を狂わされたのだろう。最後にその価値観を修正するときがくるのだが、町の人々にとっては、わがまま娘につきあって、大損したという感じだ。どっちもどっちの感じだが、妙に後味が悪い。
しかし、ノベライゼーションではなく、ちゃんとした小説でじっくり書き込んでくれたら、もっと面白くなるのにと残念でもある。なんだか腑に落ちない、あまり気持ちの良くない話なのだが、だからこそ、人物描写などがもっと丁寧に書き込んであったら、それなりに面白いものになっただろうにと思う。
それに、最後の展開はキッドマンにぴったりだとは思うが、映画ではもっと無垢な感じの女優のほうが意外性があってよかったかも。キッドマンでは、何かあるぞと初めから疑ってしまうから、あっと驚く度合いも少ない。本のほうもキッドマンの顔を思い浮かべずに読んだほうが、面白くなると思う。
2004年02月13日(金)
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