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 フライド・グリーン・トマト/ファニー・フラッグ

内容(「BOOK」データベースより)
満ち足りない日々を送る中年の主婦エヴリンは、ふとしたことから快活な老女ニニーと知り合う。ニニーが語るのは、数十年前のアラバマに生きた自由奔放な女イジーと物静かな美女ルースの物語。女たちの生き方、友情、愛を描いて、心に焼きつく不滅の傑作。

※画像は原書『Fried Green Tomatoes at the Whistle Stop Cafe』/Fannie Flagg



この本にはすっかりはまってしまい、お正月以来なかなか本に集中しなかったのが嘘のように、久々に本を読みふけった。やっぱり、ただ単に集中できないんじゃなくて、面白い本ならいつでも集中するんだな。。。(^^;

前々から、この本は面白いと聞いてはいたのだが、話の作りがややこしくて(時間などがバラバラになっているのと、登場人物が多いこと、いくつもの舞台設定があることなどがややこしいと感じた理由)、原書は途中で中断したままだったのだが、はまってしまったら、一気に話にのめりこんで、泣いたり笑ったり感動したり、自分も同じ町の住人であるかのような錯覚にとらわれるほど面白かった。

そういう感覚はアリス・ホフマンの本にもあった。どちらもアメリカ南部の話だし、またこの『フライド・グリーン・トマト』には、私の大好きな『アラバマ物語』『クレイジーインアラバマ』を彷彿とさせるような、人種差別を含めた社会問題も追求しているというところが、ああ、南部の話だなあと感じ、話に深みを与えている気がした。

困ったのは、時々おいしそうな南部の料理が出てきて、ダイエット中の空腹の身には辛かったこと。でも、バーベキューを「焼肉」、グリッツを「あらびきトウモロコシ」と訳しているのは、全然違うんじゃないか?と。「焼肉」は韓国の焼肉を想像してしまうし、「あらびきトウモロコシ」では、あのおかゆ状の食べ物は絶対に思い浮かばないだろう。

ともあれ、登場人物たちもみな魅力的で、1920年代から80年代にかけてのアメリカが詳細に描かれていて、もう一度原書で読んでもいいと思える本だった。南部の話は本当にハズレがない。

登場人物たちは、それぞれに辛い思いや悲しい思いをしているのだが、誰ひとりとして後ろ向きではない。「満ち足りない日々を送る中年の主婦エヴリン」でさえ、その胸中には共感できるものもたくさんあるが、いつしかそれを克服し、しっかりと乗り越えていく姿が、他の登場人物同様、魅力的である。

あまり詳細には描かれていないが、流れ者のスモーキーの気持ちを思うと、とても切ない。けして口に出さなかったが、ルースをずっと愛しており、道端で死んだときに持っていたのは、ルースの写真ただ1枚だけだったというのが哀れだ。けれども、口にしなかったからこそずっと思い続けていられたのかもしれない。

そのほか、殺人、暴力、同性愛などなど、深刻な問題もたくさん含まれた話なのだが、ホイッスル・ストップの暖かな空気に包まれると、いつしか悲惨な事件もカフェのひとつのエピソードとなって、人々の心に懐かしく思い出されるといった感じになっていく。エピソードがたくさんありすぎて、何度読んでも「こんなことあったっけ?」といった、その都度新鮮な思いにとらわれるのではないだろうか?

2004年01月23日(金)
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