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■ アンダーキル(B+)/レナード・チャン
母親を知らず、父親も幼くして亡くし、冷たい伯母に厄介者として育てられたアレン・チョイス。彼は孤独を心に秘めたままボディガードとなった。
ある夜、アレンの元に恋人のリンダから電話がかかってきた。弟のヘクターが車ごと谷底に落ちて死んだという。車には麻薬の原料が大量に積んであった。警察は事故死と断定したが、事故状況からリンダは弟が何かの事件に巻き込まれたのではないかと感じ、真相究明のためアレンに助けを求める。
やがてヘクターが、若者たちの集まるレイヴで純度の高い麻薬をさばいていたという事実が明らかになる。だが、ある晩を境に突然姿を消したという。さらに事故の直前、幼い時に家族を捨てた父親をヘクターが探し出し、再会を果たしていたことも判明した。アレンとリンダは父親の行方を追うとともに、ヘクターの死との関連性を探るが・・・。
狂乱のレイヴに揺れる死の影。拭いきれない血のつながり。すべてが収斂していく先にある衝撃の真実とは?
─カバーより
これ、ミステリー(サスペンス?)なんだと思うんだけど、展開がだらだらしていて、なかなか話に乗れない。アメリカの話なのだが、主人公は韓国系アメリカ人ということなので、どうしてもアジア系の顔が浮かんでしまって、アメリカ映画を真似た韓国映画でも見ている感じがして、雰囲気も掴みにくい。解説には「ストイックなハードボイルド」だと書いてあるが、ハードな部分は全然なくて、ハードボイルドの定義ってなに?という感じ。単純に、主人公がボディガードだからハードボイルドだということはないだろう。
そもそもアレン・チョイスの育った環境も普通でないし、元(?)恋人のリンダの家庭も普通じゃない。彼らは別れるのか、別れないのか、なんともはっきりしない状態なのだが、そこにドラッグや児童ポルノの犯罪がからんで、いくつもの殺人事件が起こる。事件を追うアレンがまた優柔不断で、事件を追うのか、恋人のことを考えるのか、どっちかにしてよ!と、イライラしてくる。
最後はあっと驚くドンデン返しと言いたいところだが、すでに予想がついていてまったく面白くないし、サスペンスとしての展開も退屈である。テンポも悪いし、キレがない。主人公にも魅力がない。
この話の中に、特に人種差別があるわけではないので、自分は韓国系だと何度も書く必要もないだろうと思うが(アレンはアメリカ生まれのアメリカ育ちで、韓国との関係が書かれているわけでもない)、なぜかそれにこだわっているのが納得できない。かといって、それが強烈な個性になっているわけでもなく、韓国系であるということを主張するにしては、非常に中途半端だ。この話では、主人公が韓国系であることは、ストーリーには全くなんの関係もない。そのことによる他のアメリカ人との違いが書かれているならわかるが、特にそれもない。
リンダの家庭の事情は、その後の事件に関わることなので、まあいいとしても、アレンの育った環境は、主人公の性格にあまり反映されていなくて、ただ孤独であるというのを強調したいためだけに作り出されたものとしか思えない。「孤独なボディーガード」=「ハードボイルド」だというのは、あまりに安直。アレンの性格は、孤独とかストイックとかということではなく、明らかに優柔不断。暗い。これではヒーローになるのは難しいだろう。
2003年12月28日(日)
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