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■ 心すれちがう夜/ジュード・デヴロー
内容(「BOOK」データベースより) 1909年、ニューヨークに住む29歳の美女テンペランスは、女性の人権を向上させることに心血を注いでいた。ところが、寡婦だった母親が突然スコットランド人と再婚し、テンペランスも否応なしにスコットランドへ。不満を爆発させる彼女にたいし、義父はアメリカへの帰国を許すための条件を提示した。それは彼の甥ジェイムズの花嫁を見つけてあげること。承諾したテンペランスは、美しい田園地帯の領主ジェイムズのもとへ赴くが…。人気作家が繊細なタッチで綴るロマンス小説の佳編。
主人公はどうなることかとはらはらしながら、面白くて一気に読んでしまった。枠組みはやはりロマンス小説につきものの、美男美女のヒロインとヒーローが、互いに否定しあいながらも、だんだんと惹かれていき、途中もうだめかと思わせておいて、最後はめでたくハッピーエンドという、よくあるパターンなのだが、状況設定がなかなかうまく、宝探しというミステリー的要素も加わって面白い。テンポもよく、だれたところもない。
人物の関係が、どうも『嵐が丘』に似ていると思ったら、やはり作者はそれを意識していたようで、途中に「あなたはあなたで『嵐が丘』のヒースクリフも顔負けなぐらい物思いに沈んでいる」という部分があった。ヒーローはたしかにヒースクリフのような人物なのだ。
話ができすぎだと思う部分もあるが、テンポの良さに助けられて、そういった点も許せてしまう。この作家は何冊か原書も持っているので、また読んでみたい。
ヒロインは、女性の自立や人権向上といったことに夢中になっていたのだが、スコットランドの雄大な自然と、そこに住む温かな気持ちの人々に囲まれるうちに、徐々に自分のしてきたことがうわべだけだったことを知る。一番痛切に感じたのは、自分は本当に人を好きになったことがなかったのだということだった。
結婚などしないと言い切っていたのに、そのことに気づくや、結婚したいと思うようになる。またいかにも男を知っているかのように演説していたのだが、実は何も知らなかったことにも気づく。それからのヒロインの気持ちの素直さは、特筆すべきだろう。
行動はなかなか気持ちに伴わないが、彼女の中の素直さは、女性として非常にかわいらしい。辛いことがあっても、がんばって前向きに進む彼女もまた好感が持てる。強い女性だが、ノーラ・ロバーツの小説に出てくるような傲慢な感じの女性とは違って、自分に素直なところがとても魅力的だ。結婚とか人権とか言う前に、「相手を愛する」という基本的な感情を、思い出させてくれる。
2003年12月24日(水)
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