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 サンタクロース/ジョーン・ヴィンジ

妖精たちと北極の小さな村に住むサンタクロース。何百年もの間、子どもたちに夢を贈っていたのだが、ある日、一人の妖精が失踪、サンタは行方を探しにソリに飛び乗った・・・。

デブでお人好しのサンタと、いたずら妖精パッチが繰りひろげるユーモアとペーソスいっぱいの物語。SF各賞総なめの人気女流作家・ジョーン・ヴィンジが描く傑作ファンタジー!
─カバーより


この話は、まず人間だったニコラスがクリスマスに子どもたちに手作りのおもちゃを配っているところから始まる。子どもたちが喜んでくれるのは無上の幸福ではあったが、ニコラスとアニア夫婦には子どもがなく、それが二人の悲しみともなっていた。ある日、猛吹雪の中で立ち往生してしまったニコラス夫婦は、突然北極にやってきていた。そこでクリスマスエルフたちの歓迎を受け、ニコラスとアニアは永遠の命をもらい、何世紀もサンタクロースとして、世界中の子どもたちにプレゼントを配り続けることになる。

エルフの中には、パッチという発明の天才がおり、新しいおもちゃを次々と作り出したのだが、ある年、おもちゃ製造の責任者という重要なポストについたパッチは、オートメーションでおもちゃを作ることを思いついたのだが、できたおもちゃはどれもすぐに壊れてしまうような代物だった。

このことでサンタクロースの名前に傷がついた。世界中からおもちゃが送り返されてきたからだ。責任者の任を解かれたパッチは、ひとりエルフの村を出て行き、現代のニューヨークにやってくる。そこで手を組んだのが、悪徳おもちゃ会社の社長、B.Z.だった。

パッチはB.Z.におもちゃを作らせてくれるよう頼み込む。危険なおもちゃを作ってまずい立場に陥っていたB.Z.は、パッチのアイデアに飛びつき、サンタクロースに挑戦する。パッチの作ったプレゼントは、なんと、中に浮かぶことのできるキャンディだったのだ。それをパッチはロケット工学を応用したパッチ・モービルで、サンタに先駆けて配ったため、サンタのプレゼントは、子どもたちに見向きもされなくなってしまったのだ。

これによって、サンタは失意のどん底に陥り、おもちゃ作りもやめてしまったほど。時代が変わったと言っても、人間の暖かい心まで変わってしまったのだろうかと、思い悩む。もちろんパッチのことも心配でたまらない。

だが、パッチに危機が迫った。サンタが仲良くなった人間の子ども、ジョーとコーネリアも一緒に危機に立ち向かう。そして再びサンタは世界中の子どもたちから尊敬される人物となった。

あらすじはこんなところ。ファンタジーの世界と現実の世界がミックスされているので、辻褄の合わない部分も多々あるのだが、それはクリスマスのことだから、と大目に見てあげよう。映画の写真がところどころに入っているので、それがちょっと邪魔だったが、なかなか面白い本ではあった。

最後に、この本を翻訳した神津カンナがこう書いている。

「月の石も見られるし、コンピューターで全てを割り出すような時代・・・サンタクロースは、あり得ない現実の中で、それでもちゃんと私たちの心に生きている。あの人はやっぱりいるのかもしれない」

その答えは本の中にある。

「それはわれわれの現実の果てを越えたどこかに存在している。そして、心のなかでひそかにサンタクロースを─惜しみない愛を、ほとんど忘れられてしまったクリスマスの真の意味を─信じる心やさしい読者のみなさんなら、今晩夢を見るときに、暗闇のなかにきらきら光るか明かりを、かすかに目にできるかもしれない」

2003年12月22日(月)
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