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 クリスマスの思い出/トルーマン・カポーティ

出版社/著者からの内容紹介
ささやかな、けれどかけがえのないクリスマス。画と文がともに語りかけるシリーズ最終巻はカラー頁を加え、より美しく、愛らしく。

カバーより
遠い日、僕たちは幼く、弱く、そして悪意というものを知らなかった。


これもお気に入りの<イノセント・ストーリー>シリーズのひとつ。
両親の離婚によって、赤ん坊の頃から親戚に預けられたバディー。そこには無二の親友がいた。彼女はかなり年の離れたイトコここでは名前は出てこないが、(『あるクリスマス』に出てくるスックのこと)だが、バディーにはかけがえのない人だった。

毎年クリスマスになると、彼女は大量のフルーツケーキを焼く。これは周りの人にあげるのではなく、ローズヴェルト大統領だとか、親切にしてくれたセールスマンだとかに送るのだ。二人はせっせと小銭をため込んで、その日の準備をする。その様子がまた、心温まるかわいらしさだ。お金などなくても、彼らは幸せだったし、その世界はけして壊されたくなかったのだ。

おばあちゃんイトコのスックは、バディーと同じような精神年齢なのだろうか、年はかなり違うのに、やることや考えていることはすべて一緒。二人は他の大人たちから孤立しているが、二人の世界は素晴らしくイノセントで、本当に悪意などは影も形もないのだ。

同じく<イノセント・ストーリー>と呼んでもいいだろうと思える『草の竪琴』には、このスックとの暮らしがもっと詳しく書かれているのだが、双方に共通しているのは、もうけして戻ってはこない少年の日々への郷愁と、大人になることへの不安、悪意だらけの大人の世界からの逃避といったことだ。そして、少年時代のそういった美しく輝いている世界をそのまま持って、大人になってしまったのがカポーティだろう。そこに帰りたいと願うカポーティの切なる思いが、ここにもまた溢れている。

カポーティの、この<イノセント・ストーリー>シリーズの村上春樹の翻訳は非常に好きなのだが、やっぱりこれも、最後には柴田元幸さんに助けてもらったそうだ。初めから柴田さんではどうなの?と思う。

2003年11月25日(火)
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