|
|
■■■
■■
■ 『私たちはなぜアメリカ人なのか―15 reflections』/米国国務省国際情報プログラム局 (編), 青山 南 (訳)
同時多発テロのあと、米国国務省国際情報プログラム局から、「ライターズ・オン・アメリカ」(Writers on America)という小冊子が刊行された。その翻訳。
◆要旨 (「BOOK」デ−タベ−スより) アメリカ人の「ホ−ムランド」とは何か!?アメリカを代表する作家と詩人による15のアメリカ文化論。多民族国家アメリカの多様性。
◆オビより ブッシュ政権の、パウエルが指揮する国務省の一機関からこういうものが出たとなると、体制翼賛的な文章が並んでいるのではないか、と思いがちだが、意外にもそうではなく、けっこう充実したアメリカ文化論集になっている。〜注目したいのは、アメリカが多民族国家であることをしめす書き手たちがどっさり集まっていることだ、書き手のほぼ半数がいわゆる「白人」ではないのだ。〜もちろん、そんなアメリカの多様性の強調こそ、国務省がこの小冊子をつくった趣旨なのだが、なかなか壮観である。〜「ニューヨーク・タイムズ」は、海外向けの文章であることをとりあげて、アメリカでだけ発禁だ、と皮肉っている。 ─青山南(2003年2月19日朝日新聞文化欄)
◆目次 メイン・ストリ−トをちょっとそれたところ(エルマズ・アビネイダ−) わたしもまた、アメリカをうたう(フ−リア・アルヴァレス) アメリカの夢の強制力(スヴェン・バ−カ−ツ) アメリカからのはがき(ロバ−ト・オレン・バトラ−) 地図と凡例(マイケル・シェイボン) アメリカの詩のアメリカ的なところとは?(ビリ−・コリンズ) アメリカのアメリカ的なもの(ロバ−ト・クリ−リ−) アメリカの歴史家であるということについて(デイヴィッド・ハ−バ−ト・ドナルド) アメリカ人であることは書くことにどんな影響をあたえているか?(リチャ−ド・フォ−ド) 命のために(リンダ・ホ−ガン) 国境の両側(マーク・ジェイコブズ) アメリカの牛乳瓶(チャールズ・ジョンソン) アメリカ作家であることについて(バラティ・ムカジー) この杖がわたしは好き(ナオミ・シーハブ・ナイ) 田舎の時間感覚(ロバート・ピンスキー)
この本は、「9.11の同時多発テロのあと、アメリカの作家や詩人たちによって書かれた文章」といった知識しかなかったのと、「アメリカでだけ発禁だ」というニューヨーク・タイムズのコピーが刺激的だったため、どれほど痛烈なアメリカ批判が書かれているのだろうか?と、ほとんどマイケル・ムーアの『アホでマヌケなアメリカ白人』的な文章を期待していたのだが、青山南さんの解説にあるように、それとはまったく次元の違う「アメリカ文化論集」であった。『アホでマヌケな・・・』的文章を期待していたという意味では期待はずれではあったのだが、なかなか高尚な文化論で、なるほどと思えるものだった。ちなみに「9.11」の事件について直接触れているのは、ロバート・オレン・バトラーとロバート・ピンスキーだけだったと思う。
中でも気に入った文章は、やはりマイケル・シェイボン。それに、マーク・ジェイコブズ、ナオミ・シーハブ・ナイ、ロバート・ピンスキーあたりか。とりあえず「9.11」とは関係なく、無理なく入り込める好みの文章だった。
特にマーク・ジェイコブズの「いまだ一度しか見たことのない三ヶ国語の夢から覚めたときの満足感」というのは非常に興味をそそられた。私も二ヶ国語の夢は見たことがあるが、三ヶ国語かあ・・・という感じで、そんな夢を見てみたいと思う。ジェイコブズは外交の仕事もしているので特にそうなのだろうが、その夢は、アメリカが多民族国家であることの象徴のような気がした。
2003年11月22日(土)
|
|
|