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■ 龍のすむ家/クリス・ダレーシー
下宿人募集─ただし、子どもとネコと龍が好きな方。そんな奇妙なはり紙を見て、デービットが行った先は、まさに“龍だらけ”だった。家じゅうに女主人リズの作った陶器の龍が置かれ、2階には《龍のほら穴》と名づけられた謎の部屋があった。リズはそこで龍を作っているというが、奇妙なことにその部屋には窯がない。いったいどうやって粘土を焼いているのか・・・。引越し祝いに、リズはデービットに「特別な龍」を作ってくれた。それは片手にノートを持って、鉛筆をかじっているユニークな龍だった。 『一生大事にすること、けして泣かせたりしないこと』 そう約束させられたデービットは彼をガズークスと名づけた。やがて、ふしぎなことが起き始める。デービットが心の中にガズークスの姿を思い浮かべたとたん、ガズークスが持っていた鉛筆で文字を書きはじめたのだ!デービットはもうすぐ誕生日を迎えるリズのひとり娘ルーシーのために、ガズークスと一緒に物語を書くことにした。だが、物語に書いた出来事がどんどん現実になりはじめて・・・。はたして、ふたりの物語はどんな結末を迎えるのか?リズとルーシーは何者なのか?そしてこの家の龍たちは、もしかして・・・? ─カバーより
恐竜好きなので、龍(または竜)の話は大好き。『指輪物語』のプロローグでもある『ホビットの冒険』にも、「ハリー・ポッター」にもドラゴンは出てくる。ドラゴンはファンタジーの必須アイテムだ。
本書は、龍の話と作中作であるリスの話(物語に書かれたことが現実に起こるのだが)が同時進行する。それは言いかえると、「自分の可能性」と「友情の大切さ」の物語だ。最後に涙する人もいるだろうと思うが、やはり子供向けの域を出ない。装丁からして、それほど子どもっぽくはないのかと思ったが、期待に反して幼い印象。アイデアは面白いとは思うのだが、もう少し違う展開がほしかったという気がする。「龍の話」として読むと、がっかりする。翻訳の子どもっぽさもマイナス。おそらく原書で読んだら、もっと印象が違うだろうと思う。
龍の名前に、ガウェインやグウィネヴィアなどが出てくるし、ここにもアーサー王物語の影響がある。そういったところや雰囲気などは、いかにもイギリスのファンタジーという感じでいいのだが、全体として幼い印象なのが残念。児童書だからと言えばそれまでだが、いい児童書は、大人にもけして幼い印象を与えないものだと思う。
しかしこういった夢のある話は、内容の良し悪しはともかく、それだけでほっとする。ドラゴン好きとしては全然物足りないが、主人公のデーヴィットも、今時珍しい素直な好青年だし、物語として悪い印象はない。期待していたほど龍の出番がないのが残念といったところ。だいたいが龍とはそんなもので、なかなかメインにはなり得なかったりするのだが、『龍のすむ家』というタイトルで、リスの話がメインだなんて誰が想像するだろう?もっとも、原題は『The Fire Within』で、「龍」なんてどこにも書いてないのだが。
2003年11月09日(日)
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