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 貯水池に風が吹く日/アン・ビーティ

海岸のカフェで、見知らぬ若い女から高価な指輪を預けられた女性、人生の辻褄合わせばかりしてきたと突如気づく男、なぜかいつも他人の打ち明け話を聞かされる中年女性・・・。奇妙なめぐり合わせが引き起こす現実のドラマと、脳裏をよぎる心象風景とが鮮やかに交錯する。さらに円熟味を増した筆で、移りゆく心象を絵画のように精巧に映し出す。深い共感を呼び起こす最新作10篇を収録。
─カバーより

※画像は原書『What Was Mine : Stories』


目次
人生の終わりの、ある一日のことを想像してみよう
アマルフィにて
蜂蜜
一年でいちばん長い日
ワーキングガール
マリーの待つわが家へ
ホレイショーの芸当
ねえ、知ってる?
父のかたみ
貯水池に風が吹く日


<訳者あとがきより>

今回の作品では、作者に合わせて、登場人物たちも年齢を加えています。そのぶん、彼らの悩みにも生活感のようなものが出てきて、読む者の共感を誘うところが多いようです。彼らの悩みはもはや漠としたつかみどころのないものではなく、地に足をつけた生活の中から、必然的に生じてくるものです。そのせいか、ビーティの特徴といわれた、登場人物に感情移入しすぎることのない、むしろ突き放した書き方に、内省と優しさが加わり、前作までにあった読後の一抹の寂寥感が和らいでいるような気がします。さまざまな悩みをかかえながら、それでもみんなちゃんと生きている。そんなことを感じさせてくれますし、「短編の名手」「現代生活の観察者」あるいは「時代の気分の記録者」という世評もうなずける作品群といってよいでしょう。
─亀井よし子


無難に感想を述べれば、訳者あとがきに書いてあるようなことになるのだろうと思う。たしかに本書は、『燃える家』『あなたが私を見つける所』に比べると、大人の話という感じがする。それでもやはり、離婚や不倫は当たり前のように描かれていて、そこにどうしても私には共感できない深い溝があるのは否定できない。

本書は他2冊に比べると、そういった話も少なくなってはいるのだが、その代わりに話がまわりくどくなっているような気もする。それに、どの作品も一様に、子供の影が薄いなあと感じた。もちろん子供が出て来ない話だってあるのだが、夫婦や家族の話の中で、子供の位置はどうなっているんだろうか?といつも疑問に思ってしまう。自分自身を大事にするお国柄と言ってしまえばそれまでだが。。。

苦手意識を克服するために、3冊続けて読んだのだが、読めば読むほど心がねじれてくるし、感想を書けば書くほど否定的になってしまうので、なんともやりきれない。しかしこれだけ読んで、ただ一つの作品も記憶に残らないというのもまた珍しい。短編は一度に読むべきではないという証明のようなものかも。また、アン・ビーティに限らず、長編小説よりも短編小説のほうが読むのに時間がかかるというのも実感した。

2003年11月08日(土)
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