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 海底二万里/ジュール・ヴェルヌ

内容(「BOOK」データベースより)
世界の海上に続発する奇怪な海難事故。長く、紡錘形で、ときに燐光を発し、クジラよりはるかに大きく、異常な速力をもった"なぞの怪物"が目撃されていた。調査に向かったパリ科学博物館のアロナックス教授たちは、ついに日本近海で、この怪物に遭遇する―。自由と海を愛するネモ船長と、超潜水艦ノーチラス号に導かれ、海底に展開する大冒険。いまよみがえるヴェルヌ不滅の名作。


世間を騒がせた話題の“怪物”は、陸の人間社会に嫌気がさし、海の中で生きようというネモ船長の潜水艦「ノーチラス号」である。“怪物”調査に乗り出した科学者アロナックス博士と助手のコンセイユ、銛打ちのネッド・ランドの3人が、このノーチラス号にいわば軟禁され、世界中の海を旅してまわるという話。分厚い本である。その半分は、ベルヌの豊富な地理、歴史、博物学が披露されており、その道に興味のある人なら、ストーリーとは別に、大いに楽しめることだろう。興味がなくても、ベルヌの膨大な知識に驚かされる。ちなみに「ノーチラス」とは、オオム貝のことである。

軟禁された3人は、陸に逃げ出さない限りは自由で、海底の散歩などにも船長と一緒に出かけることができる。海草の森に狩りをしに行ったり、海底火山を見たり、真珠貝を取りに行ったり、サメと闘ったり、となかなか楽しそうである。だが何といっても、消えた大陸アトランティスにその足で立ったときには、読んでいるほうも鳥肌の立つ思いだった。紅海と地中海は地下で繋がっているとか、アトランティス大陸の位置だとか、そのまま事実として本気にはできないものの、大いにロマンをかき立てられる。

クレスポの森での狩り、トレス海峡の座礁、サンゴの墓地、セイロンの真珠採取、アラビアの海底トンネル、サントリンの火、ビゴ湾の財宝、アトランティス、南極。次々と海の中を探検しながら、ノーチラス号は世界中を旅するのだが、氷の中に幽閉され、大ダコの群れと闘い、メキシコ湾流での嵐に遭ったあと、国籍不明の軍艦を撃沈する。ここでアロナックスはネモ船長の真の目的を知るのだ。何かの復讐。それも激しい憎悪を伴った恐ろしい復讐。しかし、ネモ船長もけして冷血漢というわけではなく、そのことに心を痛めてもいることを知るのだ。

だが真の目的を知った以上、潜水艦に残るわけにはいかないと決意した捕われの3人は、脱出を試みるが、折り悪しく遭遇したのは恐ろしい「メールストロム」(北海のノルウェー近海の大渦巻き)だった。脱出するべくボートに乗り込んでいた3人は、潜水艦もろともこの大渦巻きに飲み込まれ、だが気づいたときにはノルウェーの漁師に助けられていた。ノーチラス号の運命は定かでない。

というわけで、海底二万里の旅は終わる。私はどこかで海底人(半魚人?)に出会うものと思って期待していたのだが、それは勘違いであった。それと格闘した巨大生物は大イカだと思っていたが、これも勘違いであった。ノーチラス号を作った人間の科学力も素晴らしいが、それ以上に大自然の驚異は素晴らしく、また恐ろしいとも感じた本だった。なによりも、19世紀にこのような科学小説を書いたヴェルヌの想像力には感嘆するばかり。人間の乱獲によるクジラやマナティなどの絶滅や、海の破壊、汚染など、現代の問題を鋭く指摘しているのにも驚いた。

2003年10月07日(火)
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