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 大魚の一撃/カール・ハイアセン

内容(「BOOK」データベースより)
R・J・デッカーは以前マイアミの一流新聞社専属のカメラマンだった。写真の腕は一流だったが、持ち前の一本気な性格のため新聞社をやめ、現在は私立探偵稼業で糊口をしのいでいる。住居はトレーラー、唯一の財産はカメラだ。そんな彼のところに大財閥のデニス・ゴールトが仕事を依頼してきた。バス釣りトーナメントで行なわれている不正行為を暴く証拠写真を撮って欲しいという。すでに同じ仕事を請け負った男がひとり殺されている。しかし報酬額5万ドルにひかれたデッカーはさっそく問題の釣り師の本拠地へ乗り込み、新聞社時代の友人ピクニーの協力を得て調査を開始した。が、その直後ピクニーも何者かに殺された。捻りのきいたユーモアと軽快なテンポに乗せて放つC・ハイアセンの第2作。


600ページ近くあるミステリだが、途中退屈もせず、最後まで面白く読めた。
「バス釣りトーナメント」というメインの筋に、政治の汚職、環境問題などがからみ、登場人物も多く、人も次々に殺される。それが散漫にならずに全部きちんとまとまるのがすごい。先日読んだ『ストリップ・ティーズ』も、またミステリではないが『HOOT』でも、政治がらみの大物が必ず悪いやつで、フロリダの美しい自然を金儲けのために、平気で破壊していくのだ。どの作品にもこういった環境問題は必ず提示されており、ハイアセンのとぼけたユーモアにあはは!と笑いながらも、考えさせられることはたくさんある。ミステリに社会批判、風刺がプラスされた作風と思えばいいだろう。


<魅力的な登場人物>

本書では、魅力的な人物がたくさん登場する。まず主人公のR.J.デッカー。彼は元カメラマンの私立探偵で、短気で怒ったら何をしでかすかわからない男。離婚した妻を今でも愛していて、現在はひとりでトレーラー・パークに住んでいる。

デッカーからガイドを頼まれたスキンクは、長髪を三つ編みにし、髭をぼうぼうに生やした巨漢で、過去になにやら秘密を持つ隠遁者。バス釣りのガイドをしながら、道路で車に轢かれた動物を拾って食べているが、実はすごい前歴があった。頭がおかしいと思われているが、自然をこよなく愛する心優しい男。

ジム・タイルは黒人のハイウェイ・パトロールの警官。これもまた巨漢で力持ち。スキンクに忠誠を尽くしている。ただし、タイルはスキンクと違って、あくまでも冷静。ハイアセンは力持ちの大男を描くと、とても魅力的なキャラを作るようだ。

そして、『ストリップ・ティーズ』にも出てきたアル・ガルシア刑事。これは今更言うまでもないが、強烈な個性の持ち主で、個人的にもお気に入りの人物。本書では少しおとなしかったかも。

この4人がタッグを組んで、問題に取り組むさまは、非常に愉快だ。それぞれの個性がそれぞれの役割にうまくはまり、読んでいるほうは痛快な気分になるし、どれもカッコイイ2枚目のキャラではないので、笑いも十分。しかし、彼らは全て、愛すべき正義の男たちなのだ。

また、悪役たちもそれぞれ個性豊かで、どこか喜劇的なキャラばかり。言うまでもなく、彼らは皆、サイコパスではない。ハイアセンのミステリには、サイコパスや陰湿な精神異常者は出て来ない。欲に目が眩んだ、バカものどもばかりといった感じだ。

そして本書では、マイアミやフロリダの自然の描写がたくさん描かれており、その光景が目に浮かぶようで、楽しかった。今度はぜひともエヴァーグレーズに行ってみたいと思う。ちなみに私は釣りは数えるほどしかやったことがないし、海釣りばかりでバス釣りは経験がないが、それでも十分に楽しめた。釣りが好きな人ならさらに面白く読めるだろう。


2003年09月05日(金)
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