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■ The Perfect Summer/Luanne Rice
<SUMMER COLLECTION>
幸せで完璧な夏の日、主人公ベイの夫が姿を消す。彼の所有しているヨットには、おびただしい血のあとが・・・。そのうえ、銀行の副頭取であった夫には、横領の疑いがかけられ、その捜査のためにFBIまでもが動き出す。事件か?事故か?あるいは殺人か?
まるでミステリを読んでいるようだが、これはジェントル・フィクション。こんな状況の中で、夫の昔の女性関係の疑惑が再度浮かび上がってくる。彼の失踪とその女性との間に関連はあるのだろうか?
ベイの夫ショーンが死体で見つかり、悲しみに沈む家族だが、さらに追い討ちをかけるように、FBIからこれは殺人だと聞かされる。銀行の金を横領した疑いも晴れないまま、ベイと子供たち3人は悲しみを乗り越えようとするが・・・。
で、ここで出てきたのが、オーガスタ・レンウィック。どこかで聞いたことがあると思ったが、全然違う小説でも同じ名前はありうるだろうと気にせずにいたら、先日読んだ、同じくLuanne Riceの『Firefly Beach』に出てきた、主人公のお母さんだったのでびっくり。
「1969年のクリスマスに、クッキーを焼いている母と幼い娘二人。母のお腹には三人目の子供。しかし、突然銃を持った男が現れ、自分の妻を奪った彼女達の父親に復讐するため、子供を殺すと言い出した。結局男は復讐が果たせず、自分に銃を向けて自殺する。幸せな家族を襲った突然の恐怖」
というあの話だ。このクッキーを焼いているお母さんが、オーガスタ・レンウィックで、あの話の中ではブラックパールのネックレスしかつけていなかったが、実は宝石をたくさん持っていて、財産の管理をショーンの銀行に頼んでいたというわけで、これまたびっくり!『Firefly Beach』のほうでは、特に人づきあいもなかったのに、ここでは結構社交的だし。
結局、あの話とこの話は、ご近所の話というわけだったのだ。なおかつ、オーガスタの家の家政婦をしているのが、ベイの親友のタラだというのだから、世の中狭いのねという感じ。続きものでもないのに、こういう設定は珍しいだろう。で、せっかく登場したからには、オーガスタ・レンウィックは何か重要な役柄なんでしょうね???
<読了後>
Luanne Riceの小説は、人間関係が複雑だ。きっかけとなる大きな事件があり、それに関わる人物があれこれ登場し、その輪の中でロマンスが生まれ、結ばれて行くという流れ。今回は事件の占める比重が大きくサスペンスタッチで、事件の真相は最後になるまでわからないのだが、サスペンスにしては退屈で、事件の流れも結末も中途半端。人が殺されたり、子供が行方不明だったりしている時に、愛を語りあっている場合じゃないでしょう!という状況もしばしばで、なんとも歯がゆい話だった。
『Firefly Beach』にも登場したオーガスタ・レンウィックについても、なぜこの人を再び登場させたのか、全く不明。ここでの役割は、全然別の人でも十分可能だし、わざわざオーガスタを出す意味はどこにあったのだろうか?ただ単にご近所だったからとしか思えない。またオーガスタのキャラも前作とは全く違っていて、ますますオーガスタ・レンウィックである必要性はないと思える。
興味深い事件を物語のきっかけにするのはいいのだが、それをきっちり描ききっていないところに大きな不満を感じる。事件そのものではなく、そこに関わる人たちの愛と友情を描いているのだとは思うのだが、しかし読者は事件の成り行きや結末を知りたいと思うだろう。それがほとんど曖昧で、消化不良気味なのだ。読後に大いに不満が残るし、途中は退屈だ。なんとか良いところをみつけようと思うのだが、とりあえずは思いつかない。読み終えることができてほっとしたという1冊である。
2003年09月10日(水)
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