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 風と共に去りぬ(3)/マーガレット・ミッチェル

内容(「BOOK」データベースより)
アトランタの材木工場を男まさりのやり方で経営するスカーレットは、伝統的南部崩壊後、かつての魅力を失いかけた貴公子アシュレへの思慕をたちきれぬまま、野性の男レットへつよくひかれてゆくが、スカーレットを姉のように慕う天使のようなメラニーは、彼女と夫アシュレの噂をきいても二人の潔白を信じて疑わない。風のごとく現れて求愛をつづけるレットの情熱に屈してついに結婚したスカーレットは、ニュー・オリンズへの蜜月の旅へ出るが…。


いまやすっかり金持ちになったスカーレットだが、その奔放な行動が原因で、二人目の夫フランク・ケネディが死亡する。まもなくスカーレットはレットと結婚し、さらに富を得るのだが、相変わらず仕事に精を出し、金の亡者となっていく。彼女の趣味はまた成金趣味であったし、北部から来た連中とのつきあいも増え、昔の社交界の知りあいは皆そっぽを向いてしまうのだった。しかしメラニーだけはスカーレットをかばって、いつもスカーレットのかたをもってくれるのだったが、いつまでもアシュレへの思いを立ちきれないスカーレットであった。

一方レットとの間に生まれた娘ボニーは、レットの溺愛のため、日増しにわがままになっていく。そのわがままが昂じて、ボニーが事故で死んでしまうと、レットは荒れに荒れた生活を送るようになる。

メラニーが二人目の子供を流産し、その死のいまわの際で、「レットはスカーレットを愛しているのだから優しくしてやって」と言うのを聞き、この後に及んで頼りないアシュレの態度に嫌気がさしたスカーレットは、初めてアシュレを愛していないことに気づく。今までもけして愛してなどいなかったのだと。

そしてレットを愛している喜びを胸に帰宅すると、時すでに遅し、レットはすでにスカーレットに対する望みを失ってしまっていたのだ。レットはボニーにしてやったように、スカーレットをかわいがり、好きなことをさせ、完璧に自分の手のうちに入れたかったのだが、それは無理なことだったのだと諦めてしまったのだ。そうしてレットは出ていってしまうが、スカーレットが困ったとき、苦しいとき、助けてくれたのはレットだったと思うと、そんなにまでしてくれる人間は他にはいない。愛していなかったなら、そこまでしてくれるものじゃないと気づき、必ずきっとレットを取り戻してみせると決心するスカーレットなのであった。

まさに激動の人生。10年くらいの間に3度結婚し、それぞれひとりずつ、3人の子供をもうけ、戦争、飢餓、家族の死、商売、社交、などなど、休む間もなく押し寄せる運命に、スカーレットは立ち向かってきた。彼女はけして立派な人間ではないが、ものすごく強い人間だ。彼女を正しく導いてくれる人さえあれば、ずいぶん違った生き方もしたのではないかとも思うが、思ったことは絶対にやらなければ気のすまないスカーレットだから、この人生しかなかっただろうとも思う。

結局は全く違う世界に住むアシュレ。スカーレットにとっては何のプラスにもならない彼を愛していないことに気づいたあとは、ずいぶん素直で正直になったと思ったが、運命はやはり一筋縄にはいかないということを思い知らされ、だがそれでもめげないスカーレットは、本当に雑草のような、踏まれても踏まれても行きぬく力を持った女性なのだと思った。

もし、戦争がなかったらどうだっただろうか?厳しい社会の歴史の中で行きぬかなくてはならなかった彼女は、持って生まれた強さもさることながら、他の男性にもめったにない責任感と、いざという場合の前向きな立ち直りの早さをもってして、あの激動の時代を生きたのだろう。そういった時代であったということを抜きにしても、まったく感嘆すべき女性だ。いわゆる美しくて優しいヒロインとは違って、とんでもない個性のヒロインだった。

そういったスカーレットの性格を理解し、能力を評価して、彼女の価値を認めていたただ一人の人物がレット・バトラーであったわけだが、スカーレットはそれに気づくのが遅すぎた。今となれば、二人に甘いロマンスなど似合わないと思うが、二人がうまくいけばよかったのに、と思う気持ちは強い。きっと取り戻してみせる!と決めたスカーレットのことだから、いつかレットの愛を取り戻すことは間違いないだろうと信じて、本を閉じた。

スカーレット・オハラやレット・バトラーの魅力は、好き嫌いは別として、すでに語り尽くされていると思うが、アシュレについては優しく繊細な人物というくらいにしか聞いた覚えがない。しかし、彼は実際優しくもなく、繊細でもない、自己中心の人物だと思う。優しさなどどこで見せただろう?

自分の世界を大事にするあまり、他人を愛せない。メラニーと結婚したのも自分の世界を守るためであり、スカーレットを愛していると言ったのは、単に欲望のためではないか。それが証拠に、彼は妻のメラニーにも何もしてやれず、スカーレットに至っては弱さを見せるばかり。逆境にあって何も考えられず、ただ嘆くか諦めてしまうかどちらかだ。スカーレットとは違った意味で強いメラニーを妻にしたため、彼はメラニーに助けられて、生きていたようなものだろう。

つい映画のアシュレを思い浮かべてしまうので、けして美しい男性だとは思えないのだが、原作ではとても美しい顔立ちで、優雅な男性のようだ。美しいものを見るのは心がときめく。けれども、いざという時に何もできない男では、あのスカーレットに我慢ができるわけがない。最後にやっと、自分はアシュレを愛していなかったのだと悟って、読んでいるほうもほっとした思いだった。


2003年08月30日(土)
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