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■ 夜消える/藤沢周平
内容(「BOOK」データベースより) 酒びたりの父親が嫁入りの邪魔になると娘に泣きつかれた母親、岡場所に身を沈めた幼馴染と再会した商家の主人、五年ぶりにめぐりあった別れた夫婦、夜逃げした家族に置き去りにされた寝たきりの老婆…。市井に生きる男女の哀歓と人情の機微を鏤骨の文章で綴る珠玉の短編集。単行本未収録の名品七篇。
目次 夜消える/にがい再会/永代橋/踊る手/消息/初つばめ/遠ざかる声
マイケル・カニンガムの『めぐりあう時間たち─三人のダロウェイ夫人』を読んでいて、ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』ばりの文体が頭から離れなくなってうんざりしていたので、全然違う文章を読みたいと思って、珍しく日本文学を。
本当は上品なお武家の話が読みたかったのだが、藤沢周平では無理だったか。私はいつも山本周五郎と藤沢周平を間違ってしまうのだけど(共通しているのは一字だけなのに)、そうだ、私が読みたかったのは山本周五郎のほうだったとあとから気づいた次第。
それでも、江戸の本所あたりの裏店を舞台にした人情話というのか、そこそこに面白かった。ただ、下町の人達の話は、ほんとにこんなふうに喋っていたのだろうか?というくすぐったさのようなものを感じてしまうのが常。今回もそれにもれず。
読み終えて、同じ時代ものでも、山本周五郎とは全然違うと思った。決定的な違いは、藤沢周平のほうは、はっきりした起承転結はあるものの、どちらかというとシチュエーションで読ませるという感じ。山本周五郎のほうは、最後にあっと言わせる巧みなストーリー展開で読ませるといったところか。外国文学で言えば、サマセット・モームのような。文章も山本周五郎のほうが巧いと感じたが、それは個人の好みかもしれない。
山本周五郎も大衆文学と言われているが、藤沢周平はさらに大衆文学になるだろう。周五郎曰く、「読者が面白ければいい」。そうだ、そのとおりだと、藤沢周平を読んでも思った。次は『用心棒日月抄』を読めと言われている。
2003年08月22日(金)
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