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 カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険/マイケル・シェイボン

物語は、アメリカが大恐慌の痛手からようやく回復した(その一方で戦争の足音がひたひたと忍びよってきている)、1939年の秋のある日に始まる。ニューヨークのブルックリンに住むサミー・クレイ(17歳)の家に、突如、従兄弟のジョー・カヴァリエ(19歳)がプラハから亡命してくる。ナチスの迫害が迫ったチェコにあって美術学校の学生だったユダヤ人のジョーは、一家の期待を背負い、マジックの師匠であるエスケープ(脱出)マジシャンのコルンブルムの助力を得て─その昔、ラビのロウが粘土で造った奇跡の自動人形、プラハのゴーレムをナチスに奪われないよう安全な国外に移そうという計画に乗じて─リトアニア、日本を経由してアメリカに脱出してきたのだった。

エンパイア新型商品会社で在庫係の職にあるサミーは、黎明期のコミック誌に熱中していて(『スーパーマン』誕生は1938年)、あれこれと模写し、ひそかに試作もしていた。そんな彼は従兄弟の画才に感動し、社長のアナポールに掛け合ってコミック誌出版の内諾を取り付ける。サミーは仲間を集めていくつものストーリーを練らせつつ、ジョーとともに、エスケープマジシャンをヒントに、“エスケーピスト”(ヒトラーと戦い、迫害されている人々を解放するスーパーヒーロー)なるキャラクターを造り出す。

エンパイア・コミックスから出版された『エスケーピスト』は大成功を収め、ラジオ・ドラマや各種のキャラクター商品となり、のちには映画化もされるが、一方でアメリカ在住のナチス信奉者からの攻撃も受けるようになる。かくして、才能豊かなふたりの若者の、自らの夢を、同時に理想社会の実現を夢見る大冒険が開始されることとなる。

─以上、訳者あとがきより


これもまた感想が難しい。あらすじは上に書いてあるようなことなのだが、シェイボン自身がアメリカン・コミックを意識しているのと同様に、カヴァリエ&クレイもコミックを手がけ、人気を博していくため、常にコミック的なイメージがつきまとい、SFのような、ファンタジーのような、現実とはかけ離れた、もうひとつ向こうの世界という感じを受ける。だが、実際はポップで軽いのりというわけではなく、結構重たい。シェイボンの博識ぶりはここでも遺憾なく発揮され、驚くべきはカヴァリエ&クレイではなく、シェイボンの頭の中という感じ。



2003年06月21日(土)
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