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 この世の果ての家/マイケル・カニンガム

内容(「BOOK」データベースより)
幼くして何かを失い、孤独を抱えて育ったボビーとジョナサン。二人は出会い、親友となる。結ばれた強い絆は、互いの家族を癒し、そして傷つけ、時と共にみな離れ離れになっていく。時を経て再会した二人は、年上の女性クレアを交えて共同生活を始める。新たに築かれた奇妙な絆―だが、幸福とはほど遠い。そんななか、三人に子供が生まれる。かけがえのない家族の日々が、ようやく、彼らに訪れようとしていた…。かつてない繊細で詩的な描写と圧倒的なストーリーテリングで、その才能を高く評価されたマイケル・カニンガム・十四ヶ国で翻訳された、代表的傑作。


幼くして何かを失い、孤独を抱えて育ったボビーとジョナサン。二人は出会い、親友となる。結ばれた強い絆は、互いの家族を癒し、そして傷つけ、時と共にみな離れ離れになっていく。時を経て再会した二人は、年上の女性クレアを交えて共同生活を始める。新たに築かれた奇妙な絆――だが、幸福とはほど遠い。そんななか、三人に子供が生まれる。かけがえのない家族の日々が、ようやく、彼らに訪れようとしていた・・・・・。
かつてない繊細で詩的な描写と圧倒的なストーリーテリングで、その才能を高く評価されたマイケル・カニンガム。14ヶ国で翻訳された、代表的傑作。
―カバーより


マイケル・カニンガムは「偉大なるゲイ小説」を書きたがっている。そんなものはありはしない。そんなのは単なる傲慢にすぎない――が、カニンガムなら、うまくやってのけるチャンスもそれなりにありそうだ。これまで、ひとつの確たる声を持つ作家として自分の立場を築いていくなかで、カニンガムは2つのテーマに焦点を当ててきた。ひとつはゲイの男性と、女性との間の深いロマンチックな関係。そしてもうひとつは、エイズがもたらす破壊である。

その高尚な目的と、壮大な成果をめざす熱意を思えば、カニンガムの評価を決定的にした『この世の果ての家』と、長大な家族サーガ『肉親』(Flesh and Blood)が、むしろ職人風の文章で書かれていて(メタファーを見つけるのが一苦労なくらいだ)、構造的にも決してタイトではないことは、意外といえば意外である。だがこれらは、まだ習作とみなすこともできよう。これが『めぐりあう時間たち』になると、もう本物の、いかにも文学的な作品である。
─「サロン・ドット・コム」より


<不思議な三角関係と強い女たち>

普通の男ボビー(たぶんバイセクシュアル)、ホモのジョナサン、そして女性のクレア。この三人の物語。最初はボビーとジョナサンの少年時代が描かれ、二人が出会い、成長して離れていく過程を、ジョナサンの母の目も通して語られている。この間にあるボビーの兄が死ぬ話は、「White Angel」という短編になっており、ここだけ取り出して読むと、事件の衝撃と、そこに居合わせた女の子の心の痛みに思わず涙する。

大人になり、ニューヨークでルームメイトのクレアと暮らすジョナサンを訪ねていくボビー。そこから3人の関係が築かれて行くのだが、それぞれの性癖があるため、事はややこしい。結局ボビーとクレアの間に子供が生まれ、あれこれ紆余曲折の末に、3人で子供を育てることになる。そこにやってくるジョナサンの元恋人。彼はエイズにかかっており、彼が来たことでまた波乱が起こり、クレアは永久に彼等のもとを去る。

カニンガムはこの作品で、家族というものを描きたかったようで、ボビーの家族、ジョナサンの家族、そして家族としての彼等3人を描いているが、その誰もが満たされない思いを持ち、一見普通の家族のようでありながらそうではなかったり、血の繋がりがないのに、なぜかかたい絆で結ばれていたりと、様々である。

ウッドストックを経験してはいないが、ウッドストックに憧れている世代。そこに行けば何かがあると信じて、既成の概念に捕われない新しい家族を作ろうとする彼等。結局そこはどうにもしようのなくなった男三人が残される、「この世の果ての家」というわけか。

この小説の中で、男は皆繊細でか弱い感じがするのに、女は強い。女性の心理をとらえるのが上手いカニンガムだが、同時に女性の怖い面も鋭くとらえているような気がする。登場する男が繊細で美しいのは、カニンガムがゲイである所以だと思う。この小説には、男の一般的な男たる部分というのは全然なく、ひたすら傷つき易く、やさしく、繊細な心の持ち主ばかり。それに比べると、ジョナサンの母親やクレアなどは、あっけにとられるような強さを持っている。


2003年06月10日(火)
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