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 ラブリー・ボーン/アリス・シーボルド

ある冬の日、少女は殺された。
けれど、少女は天国から愛する家族を見守りつづける。
「みんなのこと第好きだから、ずっとそばにいるから、だから・・・」

いつもと変わらぬ学校からの帰り道、家に買えれば大好きな家族が待っているはずだった。けれど近道をするために通ったトウモロコシ畑で悲劇は起こった。近所に住む男に、14歳の少女スージーはレイプされ、殺されてしまったのだ。

愛する娘の死に、家族は静かに崩壊していく、父親は犯人を追うことだけに人生を費やし、娘を守ることができなかった罪の意識から母親は家を出ていってしまう。妹と幼い弟は、姉の“影”を感じ、自分の存在に不安を募らせる。
そのすべてをスージーは天国から見守り、けっして聞こえることのない声を愛する家族にかけつづけていた。

「わたしの死をひきずらないで。ただ忘れないでほしいだけなの・・・」

家族の崩壊と歳性、そして永遠に消えることのない愛を描き、全世界からかつてないほど熱狂で迎え入れられた、250万部突破の驚異のデビュー小説!

―カバーより




コダック・インスタマチック、フラッシュキューブ、焼けたフィラメント、3インチ×3インチの正方形の写真。スージーと同じカメラで私が写したのは、父の写真。それは今も部屋に飾ってある。私は亡くなった父の存在を今も感じている。

物語の主人公は死んでいる。しかもその死はレイプ殺人という痛ましいもの。犯人は冒頭からわかっている。にもかかわらず、この物語がミステリーっぽくならないのは、語り手の主人公が幽霊だからだ。このことは誰もが口にする重要な部分で、殺された本人のスージーのポジティブな語りは、それゆえに感動的なのだが、私はあえてその部分には深入りしない。

私にとって、家族の死はいまだに乗り越えられないハードルだ。だから、スージーの父親の苦悩は、痛いほどわかる。しかも娘の死は殺人によるものとなれば、犯人探しに没頭する姿も十分理解できる。心臓発作で倒れてしまう父親の、痛ましいほどの気持ちには胸が熱くなる。倒れるのは、並大抵の苦悩ではないのだから。そして家族の死にともなって、家庭が崩壊していくのもわかる。柱を失って崩れ落ちて行く家そのものだ。だが死者はどうすることもできない。家族の突然の死は、ほかの家族のひとりひとりに、大きな影響を及ぼし、いきなり人生を変えることにもなる。それをスージーは、天国からずっと見守っているわけだが、最後には霊的な能力を持つ友人と入れ替わり・・・と、このあたりは少々オカルトチックだ。

私の場合は逆に父が死んだ。天国がスージーの言うようなところだったらいいなと思う。愛犬と一緒に楽しく暮らしているなら安心だ。父が今ここにいるとは感じないが、見えない力で必ず守っていてくれる。魂は本当にあるのだろうか?天国はいいところだろうか?この本を読んでいる間、ずっと父のことばかり考えた。そして父は夢に出てきた。でも、スージーのように楽しげではなかった。それは仏教とキリスト教の世界観の違いだろうか。

ともあれこの本は、私には非常に辛い本だった。父がスージーのように幽霊になって現れてくれたらいいと思うか?いや、それはない。もう一度生身の人間として戻ってほしい。それしか考えられない。というか、死んでなんかいないと思いたい。もちろんスージーの家族だってそうだろう。だから、幽霊になって家族を見つめているなんて、耐えられないのだ。



2003年06月03日(火)
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