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■ ロベルト・スッコ/パスカル・フロマン
Roberto Succo Histoire vraie d'un assassin sans raison
<最悪>の青春 両親惨殺後、精神病院から脱走、無差別殺人、強盗、誘拐を繰り返し、謎の死を遂げた連続殺人犯ロベルト・スッコ。ヨーロッパ全土を震撼させ、「天使の顔」を持つとされた彼の<最悪>な青春と、追跡する警察の死闘をリアルに描く、フランスにおけるカポーティの『冷血』と絶賛された傑作ノンフィクション。――カバーより
内容は上記の通りで、事件を詳細に描いたノンフィクションなのだが、再現フィルムを見ているようで、面白い。翻訳は直訳調で、けして上手いとは言えないが、ノンフィクションであることを考えれば、事実をきちんと伝えるという性質上、仕方がないかもしれない。
装丁がほとんどPBのようで、カバーを外すと、どこから見てもブラック、ブラック、ブラック。。。中は2段組で600ページ近くの長編。装丁に惹かれて購入したのだが、中身もブラックだ。凶悪事件を一緒に追いかけているようなスリル。ただし、物語とは違うので、たいした役割でもない人物が次々に登場する。うしろの人物表や地図がなければ、混乱するかもしれない。
窃盗、誘拐、殺人を繰り返しながら逃げまわる犯人ロベルト・スッコ(最初はまだこの名前はわかっていないが)。そもそも気が狂っているので、その行動に筋書きはなく、捜査するほうでも全く予測がつかないという状況。そして気が赴くまま、手当たり次第に犯罪を犯すので、彼が出没する地点では誰もが被害者になる可能性がある。これは怖い!しかもこれはノンフィクションだから、実際に起こったことなんである。
言葉や理屈の通じない相手というのは、本当に怖い。狂人とまではいかなくとも、自分のことしか考えられない人間に、理屈を説くのは不可能のように思われる。実際、周りにもそういう人間はたくさんいる。このロベルト・スッコだけが特殊なのではないと思うと、寒気がする。
本の最初のほうは、連続殺人犯の正体が明かされておらず、ミステリーを読むような感じで話が進んでいくのだが、最後に犯人の生い立ちや、彼の内面を描いており、疑問の残るその死とともに、印象的なラストとなる。
ノンフィクションではあるが、事実は小説より奇なりという言葉どおり、けして作り物にはないリアルさ(著者の丹念な調査やインタビューの結果だと思うが)がある。
ロベルト・スッコの内面の孤独や葛藤には同情を覚えるが、犯した罪は、それでは補えない。精神病であると診断されたために、終身刑を免れたスッコだが、病院を脱走して、幾重にも罪を重ねたことを考えると、そういった責任能力がないという判断が正しいのかどうか・・・。見かけは「天使の顔」を持つというスッコ。ゆえに、スッコを英雄視する女性などもいて、複雑な思いだ。
それにしても、ノンフィクションはだいたい退屈してしまうものだが、これは非常によく考えられた作りになっていて、ミステリーを読むような興奮を味わった。ただ、フランスやイタリアの地名などに慣れていないせいで、そのあたりが読みにくいといえば読みにくい。詳細な場所の描写があっても、まったく頭に浮かばないから、面白みも減少しているかもしれない。
2003年04月09日(水)
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