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■ アイヴァンホー(上)/サー・ウォルター・スコット
まずは、12世紀あたりのイギリスとフランスの歴史を念頭に入れながら、騎士たちの馬上試合を思い浮かべよう。
美貌の姫ロウィーナの前に、試合に勝って姿を現した「勘当の騎士」アイヴァンホー。彼は、ロウィーナが身を寄せる郷士セドリックの勘当された息子ウィルフレッド(ロウィーナに思いを寄せたため)であったというわけ。そしてアイヴァンホーを助けた黒騎士は、あの獅子王リチャードであった。
ストーリーはややこしくないが、書き込みが細かいし、和洋折衷の訳がなんとも奇妙で面食らう。武士貴族にさむらいとふり仮名がついていたりして。。。
[歴史メモ] 1066年、ノルマンディ公ウィリアム(一世・征服王)がイギリスに侵入し、ロンドンでイギリス王の王冠を市民から受けて正式の国王になった。その後、曾孫の代でリチャード一世が王位を継ぎ、獅子心王と呼ばれ、第三回の十字軍を起してパレスティナで勇名を轟かした。物語中の大きな人物の一人。帰国の途オーストリアのレオポルドのために捕らえられたが、第一回の身代金払込みで釈放される。弟のジョンは暗愚な王子だったが、父ヘンリ二世の寵を受け、後にリチャードの後を継いだ。しかし、物語の中でリチャードが一人の無名の騎士に変装して現れ、アイヴァンホーを助け、修道僧タックに会うというのは作者のフィクション。いわば、イギリスの「水戸黄門」話である。
[ロビンフッド] 王弟ジョンの催す武術試合では3人の人物が目立っている。アイヴァンホーのウィルフレッド、黒騎士、ロクスリーという郷士だ。ウィルフレッドは勝利の栄冠を得た瞬間に正体が現されるが、黒騎士のリチャード王はまだ誰であるかわからない。ロクスリーの方も正体がわからない。しかし、イギリスの読者には、このロクスリーと後で出てくる森の中の隠者が誰であるかは、名乗らずとも察しがつくことになっている。ロクスリーはロビン・フッドなのだ。隠者はロビン・フッドの一味修道僧タックである。両方とも伝説的に一般に親しい人物である。鮮緑色の上衣を着てシャーウッドの森を横行する無法者というだけで、あとは何の説明もいらない。だが、ほかのおとぎ話と違って、もう少し実在的背景がある。とはいえ、やはりあやふやである。
[読了] 英仏の歴史を勉強(?)しながら、やっと読み終えた。妙な翻訳も、今では逆に笑えて面白いし、物語もリチャード獅子心王やロビンフッドも登場してきて、だんだん面白くなってきた。特にリチャードと修道僧タックとのやりとりが面白い。この場面では、どちらも正体を明かしていないのだが、イギリス人なら誰でもすぐにこの二人だとわかるらしい。そしてそこに現れるロビンフッド。この3人が、誘拐された郷士セドリック(アイヴァンホーの父親)とロウィーナ姫たちを助けに向かうところで上巻は終わる。いよいよ冒険活劇っぽくなってきたところ。しかしこの時代劇風の翻訳。普通の言葉遣いにすれば、もっとページ数が少なくてすむだろうに。にしても、おのおの方とは。。。(^^;
2003年01月18日(土)
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