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 大いなる遺産(下)/チャールズ・ディケンズ

すっかり上流社会になじんだピップのもとに、幼い頃一番大好きだったジョー(姉の夫)が訪ねてくるが、その様子を恥ずかしいとまで思うピップ。そんな自分をもまた恥じ入る。

そんな折、奇妙な老婦人ミス・ハビシャムの招きで屋敷に赴いたピップが出会ったのは、美しく成長したエステラ。彼女に恋するピップだが、実は子どもの頃に出会ったときから、エステラを愛していたことに気づく。

下巻の冒頭は、エステラへの愛を募らせるピップの様子と、昔を忘れ忘恩の罪を犯す状況に終始する。

今更だが、主人公ピップはまだ遺産を相続したわけではない。しかるべき時に相続できる見込みがあるというだけなのだ。現時点では、21歳になった時点で、年500ポンド支払うという取り決めがなされたものの、まだ相続できると決まったわけでもなく、その遺産が誰のものかも知らされていない。

ところがある日、とうとうその相手が現れた。プロヴィス氏である。と言っても誰の事かわからないだろう。それは、ピップに幼少時代をまざまざと蘇らせ、恐怖と憎悪を与える相手だった。彼は「紳士」を「所有」するという考えのもと、血のにじむ思いをして、財産を作ったのだ。だが、いくら断ろうと思っても、今やピップはその恩恵を十二分に受けてしまっているし、働く術も学んでいないのだ。

こうしてピップの苦悩が始まり、同時に、遺産相続の賜物であると思っていたエステラは、何の関係もないことに気づき、愕然とするのだ。 この章で読者は、まさかあの人が!という思いにとらわれ、一体ピップはどうなることか、遺産は相続できるのだろうか、と気になり、さらに物語に引き込まれる。そして、これまでの出来事が、どれも無駄になっていないディケンズの筋立てに、さすがと思わずにはいられない。

「最高傑作である」というたくさんの評価に捕われていて、正確な判断ができないような気がするのだが、主人公ピップは「大遺産相続の見込み」をもってしても、けして幸福な人生を送っていない。expectationsは、「(相続の見込みのある)遺産」という意味と「期待」という意味がある。遺産と同時に、ピップのいくつもの期待を表している。


2003年01月10日(金)
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